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昭和レトロ

ドイツ最大野党連合は今年2月23日に予定されている連邦議会選挙を前に、エネルギー政策の優先事項の変更提案を概説した。2023年4月の脱原子力の完了をショルツ政権による「イデオロギーに動機付けられた誤った判断」だとし、技術・財政的に許容される範囲で、インフレを誘導した高コストな再生可能エネルギーの比重と閉鎖した原子炉の再稼働の可能性に対して専門的評価を迅速に行いたいとしている。
欧州連合は2035年EV化の時期を遅らせ、ハイブリッド車も地球温暖化防止に有効であることを認めざるを得ない状況に追い込まれている。皮肉なことに、それは再生可能エネルギーへの取り組みが先進国で最も遅れているとしてG7で叱責されていた日本のエネルギー政策に近づくことに等しい。

ところで今年は昭和で数えると丁度100年目だ。平成、令和と移り変わったが、近年日本の若者世代には「昭和レトロ」がブームになっている。初めて知るのに、なぜか切なくも懐かしい感情に揺さぶられて「エモい」となるらしい。調度品が昔ながらの「純喫茶」、古びた街並みが残る商店街での食事、昭和歌謡、ファッション、それらはすべからく写真映えするらしい。日本人の4人に3人が昭和生まれとまで言われる少子化が進行中だ。戦後生まれが8割を超える中で、昨年新語・流行語大賞に選ばれた「ふてほど」はドラマタイトルの略称だが、昭和と現代の価値観のギャップを茶化したことばだ。

昭和100年で日本は敗戦から世界第2位の経済大国にまでのし上がり、再び統計上G7最低に落ちぶれようとしている。しかし統計上はOECDの底辺を彷徨っていても、日本人はこの安全で情緒豊かで比較的差別が少ない美味しい国以上を求めていないとも言える。この激動の100年は日本人をしてある種の「悟り」の境地に至らしめた。

昨年末、日本経済新聞がアジアを中心とした世界13カ国の読者約2600人に「5年後、今より豊かになっていますか?」という質問を投げかけた。その結果「豊かになる」と回答した比率はベトナムが最も高く83.3%、マレーシア、タイ、米国が80%以上で続く。フィリピン、欧州、インド、台湾も70%以上、シンガポール、カナダ、オーストラリア、香港が60%台だったそうだ。一方肝心の日本は僅か44%と、数字上は豊かさへの欲望がもはや無くなったかのようだ。昭和にレトロを感じることと関係があるのだろうか。

「昭和レトロ」とは、急激な世界人口の増加と地球温暖化をもたらす経済発展に疑問を感じ、身の丈にあった丁度良い落とし所を求める国民の気持ちが作り出した心象風景なのだ。

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