trendseye

かくれ資産

フリマアプリ大手のメルカリは「1年以上使用しておらず理由なく家庭内に保管しているモノ」を不要品と認定して「不要品保管数量調査」を行い、メルカリの平均取引価格を基準に換算した不要品の金額を「かくれ資産」総額として発表している。同社の2023年版 「日本の家庭に眠る“かくれ資産”に関する調査」によると、2022年末時点のかくれ資産総額は66兆6772億円で調査を始めた5年間で約1.8倍に増え、1世帯あたりの平均は110万円以上となっている。2024年末では100兆円に迫っていると想定される。

「かくれ資産」流通の特徴は、中古品であるためにGDP(国内総生産)に含まれないことだ。例えば中古住宅や中古車の流通はGDPに反映されないので、国は興味がないのだ。世の中が成熟して中古品に価値を見出すようになると、実際の価値の移動が反映されないGDPが豊かさの指標とはならないことが見えてくる。にも拘らず、日本国政府は一人当たりGDPがOECD加盟38ヵ国中22位(2023年)に落ち韓国にも抜かれたと煽ってくる。

これまでの日本は、特に住宅事情においてフロー型社会と言われてきた。日本の住宅は欧米のそれと比べて短命で消耗品的に扱われているとの印象がある。建物の品質が低く耐久性が無いのではなく、税制上土地の価値は認めても減価償却が終わった中古住宅の価値を認めない政府の姿勢に問題があるのだろう。欧米では前世代からの住宅ストックを引き継ぐのが主流で、住宅にかけたお金を“貯蓄”と捉え住宅を循環的価値とする発想がある。近年日本でも古い住宅に手を入れながら大切に使い次世代へ引き継いでいこうとするストック型社会の住まい選びが広まりつつあるが、ライフスタイルとなるには至っていない。

そのような中、世界のブランド品の流通で日本発の中古品に注目する動きがある。買取販売を手掛ける大手“大黒屋”の値札付き中古品の人気が高いのだ。大黒屋の値札は日本で真贋が鑑定された信頼できる品物である証しということのようだ。この世界では「チェックド・イン・ジャパン」と呼ばれ確固たる地位を築いているそうだ。

内閣府が発表した2022年度の車や衣料品などの中古品販売額は6兆2千億円で、2010年からの12年間で2倍近くに急拡大したことが判明している。これらGDPに反映されない取引が急増しているのだ。

一人当たりの名目GDPで豊かさを測ろうという政府の目論見はきわめて発展途上国的な発想である。自国と自国民の成熟化が創り出したモノの価値を見極められない行政機構に将来はないだろう。

| 25.03.28

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE

ARCHIVES


1990年9月~2006年7月までの
TRENDS EYEの閲覧をご希望の方は
こちらへお問い合わせください。
ART BOX CORP.