第二の月
10月17日の満月は、今年最も大きく見えるスーパームーンだった。太陽系3番目の惑星である地球にとって月は唯一の安定的な衛星である。ところが最近、地球に「第二の月」ができたというニュースが配信された。この「2024 PT5」と名付けられた小惑星は、2024年9月29日から11月25日の約2ヶ月間だけ地球を回る衛星軌道にとどまり、あたかも地球「第二の月」のような成りすまし衛星となっているのだ。
「2024 PT5」は10mほどの小惑星だが、もしそれが月くらいの質量で地球の周回軌道を、例え僅かな期間でも第二の衛星として回った場合には、想像を超える気候変動が地球上で起きることになるだろう。地球の異常気象は、温暖化ガスの過剰排出によって起こるだけでなく、小惑星の衝突や衛星軌道への侵入によっても引き起こされる。地軸のズレなど天文学的事由によっては、もっと大規模に気候変動があることを忘れてはいけない。
何気なく夜空を見上げると静かに浮かんでいる月は、日によって見える形を変えながら、古代より私たち人間の生活に関わってきた。しかし、実は毎年地球から3.8cmずつ遠ざかっている。月が遠ざかると地球の自転は遅くなり、1日の時間も長くなる。月の引力は地球の自転軸の傾きを23度に保ちバランスをとっているが、地軸がわずかに傾いたために豊かだった緑地帯が砂漠化してサハラ砂漠が生まれたりもしている。遥か昔の古代エジプト文明は、もっと緑豊かなオアシスで生まれたのかも知れない。地球の衛星である月は地球の気候の調節装置のような役割を担っているのだ。
太陽系の衛星探査は過去から数多く行われ、分かっているだけでも木星に92個、土星に83個、海王星には新たに2つの衛星が加わり16個、と太陽系全体で862個の衛星が確認されている。中でも木星の衛星エウロバは月とほぼ同じ大きさで、氷の外殻の下に広がる地下海は地球の海水の2倍の量を持つと考えられている。この海は潮汐加熱(ちょうせきかねつ)によって液体状態が維持され、地球に近い生命体が存在する可能性も指摘されている。
そう考えると、これまでの惑星探査からは生命痕が見つからなかったが、862個の太陽系の衛星の中には現在進行形で進化を続ける生命体が見つかるかも知れない、というのが衛星探査の面白さなのだろうか。
地球人の飽くなき生存への本能と意志力が、NASAのエウロバ・クリッパーを木星に送り出し、中国の嫦娥6号を月の裏側に送り出したのだろう。ガザでのイスラエルの国家存続をかけたハマスとの戦いも、その目的においてまさに同根ということか。
| 24.10.25