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AIスティーブ

7月7日投開票の東京都知事選は立候補者が56人にもなり、ポスター掲示をはじめ公職選挙法をも揺るがす混乱が報じられている。そのさ中、英国では7月4日投開票の総選挙で、ある立候補者が注目されている。その名も「AIスティーブ」。文字通り人工知能(AI)政治家だ。
英国IT企業「Neural Voice」が創り出した人工知能で、同社の会長スティーブ・エンダコット氏がAIアバターを使って立候補し、本人は「AIスティーブ」の代理という立場を取る。当選した場合は「AIスティーブ」の指示通りに行動すると宣言しており、日本の都知事選にはない新時代を感じさせるチャレンジだ。
AIスティーブは24時間いつでも有権者の意見を聞き質問にも答えるなど、いかなる時間でも有権者と交流することが可能だ。しかも市民から寄せられた質疑は分析記録され、瞬時に政策に反映されるという。確実に地域住民の民意を取り込むことが可能になるわけだ。
2022年にデンマークではいち早くAIが党首を務める「人工党(Det Syntetiske Parti)」なるものが誕生している。市民とボイスチャットを通して直接対話し常に民意を拾い上げる。こうした実績を背景に欧州では「生身の政治家不要論」が多くみられる。欧州8か国で実施されたあるアンケートでは、「重要な政策は人間でなくAIに任せるべき」という意見が4人に1人の割合に上るという。ChatGPTなど生成AIを利用した条例が既に議会を通過する事例も出てきているようだ。
AI政治家は生身の人間より遥かに情報処理に優れ、少数派の意見も漏らさず取込み、視野も広い。裏金作りや高額な料亭密談も無く、国会中の質問解答作りに官僚が徹夜する必要もない。過去のデータを全て記憶しているためいかなる質問にも即座に答え、自己を優先する主張や非倫理的な言動もせず、汚職とも無縁だ。
日本でも政治家のAI利用が増えれば、不合理なことを言い放つ政治家は淘汰されることになりそうだ。「民主主義にはコストがかかる。ただではない。」と意味不明な発言をした自民党最後の派閥政治家は、さしずめ「AI太郎-1」として人工知能に代わってもらってはどうだろう。難しい漢字にも強い。民意を汲み取れない政治家の居座りが続く日本ではAI政治家の活躍が待たれるところだ。
そしてまず誰よりも早くAI化することが望まれるのはデジタル大臣だろう。「AI太郎-2」として、まずは自身の所属する派閥ラスボスから乳離れしてみてはどうだろう。

| 24.06.28

世界一危ない都市

日本は交通事故死亡率、犯罪率、銃保有率の低さなどから世界で最も安全な国であり、首都である東京も安全性が高いとされているが、果たしてそうなのだろうか?日本国民やインバウンド観光客の幻想ではないのか。
保険組織のロイズがケンブリッジ大学と共同で行っている“Lloyd’s City Risk Index 2015‐2025”は、紛争や災害の脅威を合わせて試算している。この都市リスク指標によると東京はニューヨーク、マニラ、台北、イスタンブールを抑えて1位、大阪が6位、損害保険という「危険を値踏みする仕事」から見ると、「東京は世界で最も危ない都市」とされているのだ。しかも朝鮮半島問題、台湾中国問題、ロシアとの北方領土問題などいわゆる地政学的リスクも抱えていることは周知の事実だ。
にもかかわらず、英国の国際経済誌「The Economist」の企業間事業部門で、世界約200カ国の政治・経済に関する詳細な分析・予測やデータを提供する調査・コンサルタント会社Economist Intelligence Unitの “Safest Cities in the World 2024”では、東京が「世界で最も安全な都市」に輝いている 。「サイバーセキュリティ」で1位、「医療・健康環境」で2位、「インフラの安全性」と「個人の安全性」で4位、総合スコアではなんと1位である。2位はシンガポール、大阪が3位。2015年、17年に続き3回目の調査だが過去2回も東京がトップだったそうだ。
しかしこの調査、NECが協賛している点を割り引いて見なければならないだろう。主要60都市を対象に「がん死亡率」や「自然災害の死者数」「パソコンのウイルス感染率」「凶悪犯罪発生率」を含む50以上の指標から安全性を評価しているが、そもそも国土が持つ地政学的リスクや自然災害リスクを加味していない。
南海トラフ地震や富士山噴火が秒読みに入っていると言われる中で、今回の東京都知事選では災害に強い都市作りを公約にあげる候補が多いが、果たしてどこまで真剣なのだろう?
世界の都市が自然災害からの防災上最も重視している電線地中化率は、アジアで最低レベルだ。さらに内閣府から発信される全国瞬時警報システム(Jアラート)に至っては、核シェルターのない東京に核ミサイル飛来の可能性を告げるなど滑稽ですらある。
理論的に考えると東京はリスクの高い都市だということを国民は自覚すべきだろう。

| 24.06.21

料理頻度

日本は「手料理写真をSNSに投稿」する人の数が世界的に見て断然多いそうだ。インスタグラムで「#晩ごはん」というハッシュタグをつけた投稿は380万件を超え、中には「#新米主婦」「#ずぼら主婦」とつけている人もいる。
料理レシピサービスのCookpad社は「毎日の料理を楽しみにすることで、心からの笑顔を増やす」という企業理念が日常生活でどのように実現されているかを把握するために、ギャラップ社のワールドポールという大規模調査に「料理頻度」の項目を加えて数値化を試みたそうだ。
家で料理をする「料理頻度」をキーワードに、過去5年間積み重ねて分析した結果を「A Global Analysis of Cooking Around the World Year 5」2022年度版として昨年10月に公表している。これは世界140カ国を対象としたリサーチで、家庭での食のあり方を通して収入から学歴、ジェンダーギャップに至るまでの相関関連を分析したものだ。
その結果、大方の予想に反して手料理投稿が多い日本は決して料理頻度が高い国ではないということが分かってきた。「料理頻度」の世界平均は週6.4回(昼夕計14回中)で日本はほぼ世界平均と同じだったが、フランス、ドイツ、英国が意外に高く日本を週2回以上上回るなど、日本はカナダ、米国にすら及ばずG7中最下位であった。お隣の韓国は週4回と調査対象140カ国の下から3番目で世界最低レベル。しかも日本と韓国は毎年低下傾向にあり、奇しくも合計特殊出生率と似て余裕のないライフスタイルを露呈しているかのようだ。
2022年には「味の素」がこのギャラップ社の調査に参加し、「過去7日間、あなたは料理を楽しみましたか?(Thinking about the past seven days, in general, did you enjoy cooking?)」という質問を加えている。結果は58%が楽しんだと回答、17%が楽しめなかったと回答したそうだ。「料理頻度」の高い人は「料理を楽しんでいる」と言えそうだ。
こうしてみると、日本人がSNSに手料理投稿するのは「記録」のためや他からのリアクションがほしいだけで、「料理が楽しくて料理頻度が増える」のとは少し違うようだ。日本の家庭内の食の実態は、決して豊かで楽しいとは言えないのかも知れない。
世界的にも種類が豊富で想像を絶する充実を見せるスーパーの惣菜やコンビニ食は、日本の薄っぺらな家庭生活を映し出すものであり、決して暖かい人間的ライフスタイルの反映ではないと考察できる。

| 24.06.14

サンクチュアリ-聖域

大相撲の部屋制度を舞台に叩き上げ力士の日常を描いた相撲ドラマ「サンクチュアリ-聖域」が、Netflixで配信されて話題を集めている。昨年5月から世界配信されるとすぐに日本国内でぶっちぎりの1位を記録し、公式グローバルTOP10でもランクインしている。
人生崖っぷちの若手力士“猿桜”こと小瀬清(元ヤンキー)を主人公に、壮絶な相撲部屋の実態を描く全8話のドラマだ。国技館の土俵を神秘のベールに包まれた「聖域」に見立て、そこで活躍するに至るまでの稽古や生活シーンがリアルで過激に描かれている。
そもそも日本の大相撲界は、全国から親の手に負えない、力を持て余した悪ガキを親方が預かり、叩き上げて一人前の相撲取りに育てるという徒弟制度に支えられていたのだ。
しかし大阪場所で110年ぶりに平幕優勝した“尊富士”は、日大で学生横綱となった後角界入りしたエリート力士だ。続く夏場所で初日から横綱を破って優勝した新小結“大の里”も、日体大で3度学生横綱を張った超有望力士だ。史上最速の入門7場所目の優勝で、「ちょんまげ大関」が期待されている。これを見て叩き上げ力士はどう感じているのだろう?
近年の相撲協会は興行成功のためにハワイやモンゴルに身体的優位性を求め、多くの外国出身力士を入門させて来た。しかし外国出身力士が引退後親方を襲名するために必要な「年寄株」を取得するには、日本国籍取得が必要だと取り決めている。更に2021年、有識者会議は大相撲の継承発展のためには「入日本化(にゅうにほんか)?」が必要であるとした。しかも理事や理事長といった協会幹部は日本人でしっかりと固められ、外国人の入る余地は極めて限られる。幕内優勝45回を誇る大横綱“白鵬”ですら、日本に帰化しても遂に理事になることはなかった。
一方協会は、外国出身力士と互角に闘うには叩き上げ力士では力不足、学生相撲で活躍した力士の方が即戦力とばかりに優遇し、最初から幕下付け出しで入門させて相撲界の「番付」という権威を自ら乱し、下剋上の世界を許してきたのだ。
しかし昨年9月28日、定例理事会は学生横綱らに与えられていた幕下付け出し入門資格を廃止すると発表して、「ちょんまげ大関」は今後理論的に不可能となった。
日本相撲協会の八角理事長は叩き上げから横綱になった正に「サンクチュアリ-聖域」出身だ。興行では外国出身力士や学生横綱出身力士の人気を使い倒しながら、協会としては「入日本化」を押し通すつもりのようだ。
一度開放した「聖域」の扉は果たして元に戻るのだろうか?

| 24.06.07

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