外国人嫌い
バイデン大統領がワシントンでの演説で「アメリカの経済が成長しているのは移民を受け入れているからだ」、「日本の経済停滞は彼らが“外国人嫌い”で移民を望んでいないからだ」と述べて物議を醸した。更には返す刀で「中国もロシアもインドも同じだ」と追い打ちをかけたため、ジャンピエール大統領報道官が、大統領は「移民がいかに米国を強くしているか」を話したかっただけで他意はないと火消しに追われることになった。
米国の合計特殊出生率は2021年で1.7と低いが、人口は増加している。極端な移民の流入が人口を押し上げていることは明白で、今年は遂に人口に占める外国人(海外生まれ)定住者の比率が18.2%に達している(野村総研調べ)。トランプ前大統領がメキシコ国境に塀を立ててでも防ごうとした非合法移民を含めると、その数字は更に上がりそうだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)が各種経済指標から年内に利下げを開始する可能性を示唆していたにも関わらず金利引き下げが先延ばしになっている原因も、旺盛な人口増加力にありそうだ。これは米国経済の消費力が高金利にも関わらず落ち込まないことに繋がり、インフレ再発を常に内包することになり、FRBが自国経済を理論的に説明できない原因にもなっているようだ。バイデン大統領は非合法移民も含めて移民肯定論者なのだろう。
経済協力開発機構(OECD)の「国際移民アウトルック(International Migration Outlook)」によると、移民増大による経済成長の兆候は2020年度版「移民人口比率の世界マップ」にすでに現れている。「新奴隷制度」とも揶揄される中東産油国の移民比率は極端で、アラブ首長国連邦(UAE)の88.1% 、カタール77.3%、クウェート72.8%、バーレーン55.0%と続く。西欧諸国は独仏が10%前後、人口が少ないスウェーデンは12.6%だ。英国は意外に低く5.6%だが、首相はインド系、ロンドン市長はパキスタン系と、もはや白人国家のイメージは無い。本国を捨てた白人英国人はかつて新大陸に移住し、更なる移民を受け入れた。経済成長が続くオーストラリアの11.0%を筆頭に、カナダ、ニュージーランドも移民比率は高い。因みに日本は1.8%とG7の中でも特に低い状況で、こう見てくるとバイデン大統領の発言もあながち間違ってはいないようだ。
大統領は、世界経済は格差があるから発展すると言っているようなものだが、同盟国日本は平等を求めるあまり相対的に貧乏になることを良しとして行くのだろうか。
| 24.05.10