革命魂
フランス全土から首都パリへ続く道、空港への道、ランジス(世界最大とも言われる生鮮市場)への道は、怒りに満ちたフランス農民のトラクターの車列で2週間以上にもわたって封鎖された。この大規模な抗議デモは直接的には政府のウクライナ支援のしわ寄せにも起因する。フランス国内で使用禁止の農薬を使った大量のウクライナ産農作物が安く輸入されることへの怒りである。更には2030年以降のディーゼルエンジンの廃止と増税、加えてEUが2023年から始めた共通農業政策「持続可能な農業と環境保全のためにすべての農家が農地の4%を休耕地とする義務」への不満等が重なっている。
この直接行動の背景には1789年のフランス革命が共和国を創ったというフランス国民の自信と誇り、ある種の「革命魂」があるのではないだろうか。ルーブル美術館にはフランス人の魂の原点として愛されるドラクロワの「民衆を導く自由の女神」という絵がある。これは1830年の「七月革命」をモチーフに描かれた作品だ。
日本でも世界で最も成功した革命と言われる「明治維新」が、封建制度から脱却する新しい日本を産み落としたかに見えた時代があった。しかし不幸にもアジアに進出する欧米列強に追従する植民地政策に明け暮れ、最終的に原爆投下を受けて大日本帝国を精算させられている。この革命?の過程に民意は乏しく、詰まるところお上が入れ替わっただけだった。
戦後は一転、米国への必要以上の盲従と忖度を産み、歴代政権は米国の傀儡政権と揶揄されつつ日米安全保障条約と日米地位協定を国体の礎とした。60-70年代の激しい安保闘争は一時期日本人の民意と反骨精神を大いに見せつけたが、染みついたお上を崇める体質は「革命魂」を民に植え付けるには至らなかった。日本人はいつから反骨精神を失ったのだろうか。
岸田首相は施政方針演説で2月7日の「北方領土の日」に触れ、ロシアとの平和友好条約締結に努力すると発言したが、メドベージェフ元大統領は岸田首相の空念仏のような気持ちのこもっていない発言を見逃さず、「原爆と本土空爆で200万人の国民を殺戮されても無条件に米国に追従する日本に、クリル諸島の領有権を交渉する権利は無い」と即座に皮肉られている。これこそ日本人が失った「革命魂」への強烈なカウンターパンチであろう。
史上最低の支持率のまま4月に米国の国賓待遇の招待を受けるのだろうか?もはやその姿に日本人の尊厳や反骨精神はない。70年安保闘争最後のテロリストも50年間逃げ切った後、本名で死んだ。
日本はフランスの「革命魂」に学ぶこと多し。
| 24.02.09