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エンジン日本

新春1月12日の「東京オートサロン2024」プレスカンファレンスに登壇したトヨタ自動車の豊田章男会長(ドライバーネーム“モリゾウ”)は、「トヨタはエンジンを作り続ける!」と気炎をあげ、新たな脱炭素エンジン開発プロジェクトを発表した。
「EV時代に逆行しているように聞こえるかもしれないが、決してそんなことはない。(エンジンは)未来に向けて必要だ」と、モリゾウはトヨタの社長を代弁するかのように世界マーケットへの挑戦状を叩きつけた。
カーボンニュートラル実現に向けて、2035年以降HEV・PHEVを含むガソリンエンジンを使った新車販売はさせないとするEUは、2023年まではEV市場を順調に拡大してきたが、2024年は停滞に向かう見通しだ。米国ではテスラの値段が下がり、全米最大のレンタカー会社ハーツは中古車市場の低迷を嫌い、EV車の在庫を大量に売りに出した。中国でもEVの製造過程でのCO2排出量が問題になっている。
歴史を振り返ると、1962年に待望の4輪に進出したばかりのホンダは、本田宗一郎の強い意志で1964年には早くもF1に参戦。当時フェラーリしか作れなかった1500cc12気筒エンジンを4バルブ化して搭載した「Honda RA272」で、1965年のメキシコグランプリで初勝利を挙げ世界を驚かせた。これが「エンジン日本」の実質的世界デビューだった。
当時、ビッグ3全盛のアメリカ市場に日本車の入る余地はなかった。そこに日本のオートバイメーカーがF1で突然勝利して闖入。アッという間に世界一厳しいと言われた排ガス規制「マスキー法」を CVCCエンジンでクリアしてビッグ3を震撼させたのは、1972年のことだった。
ホンダのF1エンジンは昨年、レッドブルに22戦21勝という完全勝利をもたらし、88年のマクラーレン・ホンダでの16戦15勝を超え、世界最高のエンジンコントラクターであることを証明して見せた。しかしカーボンニュートラルが叫ばれる中、2021年社長に就任した三部敏宏は、エンジンからの完全撤退と2040年には全ホンダ車をEV化すると発表してしまっていた。いちばん驚いたのはモリゾウだったのかもしれない。
その後ホンダはモリゾウに説得された?かのように2023年5月24日に緊急会見を開き、F1レギュレーションが50:50のハイブリッド化を認めたことを理由に、2026年のF1復帰を再び宣言した。熱病のようにEV一辺倒だった世界の自動車業界は、少しずつ現実的な選択を見せ始めている。そしてHEVやPHEVの需要は高まる傾向だ。
モリゾウは言う、「敵はカーボンであってエンジンではない」と。
エンジン技術は日本の宝なのだ。

| 24.01.19

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