睡眠旅行
良質な睡眠のために旅をする「睡眠旅行(スリープ・ツーリズム)」が世界で注目度上昇中だ。
旅行は普段行けない場所を訪れたり、知らないものを食べたり、非日常の体験を楽しむことが醍醐味だが、そうした体験を追い求めるために睡眠の時間を削ってしまうこともある。そして旅行から帰ってくる度に「本当に休暇を取ることができたのだろか?」と自問してしまう。
2022年パークハイアット・ニューヨークは、睡眠を促進するアメニティで満たされたスイートルーム『Bryte Restorative Sleep Suite』をオープンさせた。人工知能(AI)を搭載したマットレスを使ったベッドを売りにしている。
英国のベルモンド・ホテルでは「眠りのコンシェルジュ」が横向きや仰向けの希望に応じて枕の相談を受け、就寝時に適したお茶のサービスなどもあるという。またロンドンには初の睡眠重視型ホテル『Zedwell Piccadilly Circus』が、ポルトガルには『Hastens Sleep Spa Hotel』が相次いでオープンしている。
中でもローズウッド ホテルズ&リゾーツは、「休息の促進 」を目的とした『Alchemy of Sleep』コレクションを2022年に立ち上げて注目される。健康における睡眠の重要性を認識し、運動、マインドフルネス、栄養、静寂をセットに入念に組み立てられたプログラムで、ホリスティックな逃避行を可能にする20軒の物件がスタートしているのだ。
ゲストは1泊の「ドリームスケープ」、または2~5泊に延泊してさらに深い眠りを求める「スリープ トランスフォーメーション」を選択できる。プログラムの補完として、ブレンドされたエッセンシャルオイルやお茶、リネン用アロマミスト、シルク製アイマスクなどで「キュレーションされた睡眠ボックス」が各部屋に備わっているそうだ。
かつてリトリートプログラムが充実したスパリゾートが人気を集めたが、朝から晩まで様々なリラックスメニューが組まれ、それらは時間で管理されたものだった。
ヒルトンホテルのウェブCMで「食事時間から入浴時間、チェックアウトの時間まで、立て板に水のごとく説明する日本旅館にドン引きしたゲストがヒルトンの高級ブランドホテル「CONRAD」へ瞬間移動するというものがあった。
今年のヒルトンのキャッチフレーズは「とまるところで、旅は変わる。」だ。世界最大級のホテルチェーンも従来の旅の形とは真逆な「睡眠の質」に気づきはじめた。
良い休暇とは、「良い睡眠」あってのことなのだ。
| 23.12.08