紅旗N701
中国の習近平国家主席は、米国のバイデン大統領との首脳会談およびAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に出席するため、11月14日からサンフランシスコを訪れていたが、今回主席専用車「紅旗N701」の持ち込みが話題を呼んだ。
「紅旗」は中国最初の国産自動車メーカー第一汽車が生産する、要人専用リムジンの高級車ブランドだ。1958年に毛沢東のために最初のモデル「紅旗CA72」が生産されて以来、長年にわたって中国の要人たちを乗せてきた。現在はCA72の流れを汲む保守的な丸目の「Lシリーズ」、そして伝統を受け継ぎながらも一昨年日本でも販売が開始された、よりモダンな「Hシリーズ」を展開している。「N701」は「Lシリーズ」をベースにした装甲車両だ。
今回サンフランシスコに持ち込まれた紅旗「N701」は、ロールスロイスでファントムなどを手がけたチーフデザイナー、ジャイルズ・テーラー氏を2018年に引き抜き、紅旗の設計責任者(第一汽車副社長も兼務)に抜擢して作り出したものだ。伝統的な紅旗のフォルムを保ちつつ、よりモダンな外観となっている。一見ロールスロイスかと見紛う出来の良さで、首脳会談後に専用車に乗り込む習主席を、車好きのバイデン大統領は「美しい!」と褒めて見送ったそうだ。
一方バイデン大統領が乗る「走るホワイトハウス“ビースト”」は、米国製キャデラック「XT6」セダンをカスタマイズ、トランプ大統領時代の2018年にデビューしたものだ。窓ガラスの厚さ13cm、自重8tの超防弾仕様で、「戦車のフレームに乗ったキャデラック」とも称される。
米中のトップが外交現場にそれぞれの専用車を持ち込んだ時点から、密かに国力を誇示する戦いが始まっていた。日本の岸田首相は国家主席ではないため米国政府当てがい扶持の車で移動していたが、6年ぶりのアメリカ訪問となる習主席に対する超厳戒態勢の影響を受けて、日韓首脳会談に向った車は渋滞でスタックしてしまった。
咄嗟の判断で首相は車を降りて歩いたそうだが、G7の首脳が車を降りて丸腰で歩くとは、段取りの悪さを通り越して日本政府のリスク管理意識が問われる。首相自身のセキュリティを考えると「歩く」という選択肢は普通無いだろう。しかも相手が韓国尹大統領であればいつでも会える相手ではないか。
岸田首相には日本国トップとしての自覚がなく、国民に向けて只々自分も世界の要人と会って“外交”をして来たという“写真(絵)”が欲しかっただけなのだろうか。
| 23.12.01