文化支出
国立科学博物館が「地球の宝を守れ」を合言葉にクラウドファンディングを実施し、開始から90日間で9億円を超える支援を集めたことが報道されたばかりだ。国内クラウドファンディング史上、支援者数、支援額共に過去最高を更新したことは一見“美談”のようだが何か腑に落ちない。
文化庁の外郭団体「一般社団法人 芸術と創造」が発表した令和2年度「文化行政調査研究」諸外国における文化政策等の比較調査研究事業報告書によると、日本政府の2020年の文化支出額は1,166億円で、数字を見る限り今回調査対象になっている日米英独仏韓6か国の中で最低だ。反面、日本では地方自治体が4,700億円と国の4倍を支出し健闘している。昨今地方美術館は確かに元気がいい。
この傾向はヨーロッパでも同様である。ドイツは国が2,299億円、地方政府が11,424億円、フランスは国が4,620億円、地方政府が10,582億円だ。この2カ国は人口が日本の2/3であることを考えると、文化教育にいかに重点を置いているかがわかる。現在は円安で更にその差が広がっている。
日本の文化支出の最大の問題点は過去20年に亘って前年割れが続いている点だ。国立科学博物館によると国からの運営交付金は12年度に約29億円だったものが、22年度には約25億円まで減っている。博物館や美術館だけでなく大学の運営交付金も名目GDPに合わせて年々減額されてきた。未来への投資として守らなければいけないものがあることを国は忘れているのではないだろうか。
10月25日のイギリスの科学誌『ネイチャー』は日本の文部科学省が発表した「科学技術指標2023」をもとに、「日本には世界最大級の研究コミュニティがあるにもかかわらず、世界レベルの研究への貢献は減少し続けている」と指摘、日本の研究環境に警鐘を鳴らしている。
米国に言われてすぐ国防費は2倍になり、税金も著しく上がる日本。万博の建設費の1100億円の上振れなどかわいいものなのか?沖縄辺野古の埋め立ては軟弱地盤が見つかったと知らぬ間に6000億円も増額している。さすがの米軍も「ドローンの時代が来ているのに10年以上もかかって無駄な埋め立てをする時間と意味はない」とはっきり言っているほどだ。
国のリーダーである首相に“国家観”、特に国民の教育研究と文化度向上についてのビジョンがない。米国に言われれば出す、選挙があるから出す、という対症療法だけでは文化支出の増額は永遠に無いだろう。
| 23.11.17