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お月見

異例の暑さで秋をまったく感じない中、9月6日からマクドナルド恒例の「月見バーガー」の売出しが始まった。誕生から32年、今や日本の秋の風物詩と言えるほど楽しみにしている人も多い。
今年の中秋の名月(十五夜)は9月29日で晴れていれば期待通りの満月の「お月見」を楽しむことができそうだ。すっかり「お月見」といえば「生たまご」を思い浮かべる。熱々のかけそばに生卵をポンと落とした「月見そば」は庶民の味の永遠の定番だ。卵を落とすときれいな満月が浮かび上がり、そばの熱でだんだんと卵白が温められる。それが「朧月(おぼろづき)」のようだとも言われ、黄身に箸を入れてかき混ぜると月の明かりは闇夜に消えていく・・・お椀の中で繰り広げられる風流な景色は日本人の心象を映し出しているようだ。
十五夜に「お月見」をする文化は平安時代に中国から伝わったもので、中国では旧暦8月15日の中秋節に月餅やスイカなど丸い食べ物を月に供える。この五穀豊穣を祈念した風習が日本にも伝わり、「お月見」の始まりになったと言われている。
一方、日本初の月面着陸探査機「SLIM」(スリム)が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。通称「ムーンスナイパー」と呼ばれ、順調にいけば来年2月にShioli(栞)クレーターの100メートル以内にピンポイントで着陸する予定だそうだ。2月のスノームーンに探査機がいると思って眺めると、風情はないが新時代の「お月見」が生まれるのか。
そして今、月面探査で中心的役割を果たしているのは中国だ。2013年に「嫦娥(じょうが)3号」を送り込んで以来、19年の4号は量子コンピュータを駆使して電波の届かない月の裏側に着陸させている。対する米国は、約半世紀ぶりとなる有人月面探査を掲げる「アルテミス計画」を22年に本格スタートした。インドも月面探査を開始したが、中国は更に30年までに有人月面探査を実現すると意気込んでいる。
中秋の名月を愛でるお菓子「月餅」は中国の逸品だが原型は唐代の軍隊で勝利を祝う餅だった。高祖李淵の大将軍李靖は匈奴との戦いに勝利を収めて8月15日に国に凱旋、その記念にトルファン人が皇帝に祝いの餅を献上したのが始まりと聞く。李淵は華麗な餅箱を受け取り、丸餅を切り分けて群臣にふるまったそうだ。
ヨーロッパでもムーンケーキとして存在感を高めつつある月餅だが、経済戦争に勝利して今や世界を席巻する国力を持つ中国は、唐の高祖李淵に倣って祝いの月餅を世界に配るぐらいの余裕を披露してはどうだろう。

| 23.09.22

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