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燃やすしかない

徳島市役所は家庭ごみのうち「燃やすごみ」の名称を「分別頑張ったんやけど、燃やすしかない“ごみ”」に変更すると、5月15日に発表した。ユニークな名称変更がSNSなどで大きな反響を呼んでいる。
Twitterでは4万8000の「いいね」と1万5000のリツイートを集め、「何があったの?」「エイプリルフールかと思った」と戸惑う声もあったが、「こういうの嫌いじゃない」と概ね好評だったようだ。
「分別頑張ったんやけど」は、地元の人には馴染み深い話し言葉が取り入れられている。親しみがわきつつツッコミを誘う言い方が思惑通りネットで話題になり、多くの人に届くという結果につながっている。
現代日本人にとってそもそも“ごみ”とは何なのだろう?と自問自答し、問題提起しているようにも感じられる。ごみ箱が「護美箱」である限り、周囲にある「汚いものを見えなくする箱」即ち「汚いものを隠す箱」でしかなく、それなら「燃やしてしまおう」となってしまう。しかし最近はごみを「資源」と考えはじめ、ごみ箱は資源を一時貯める宝庫であると捉えられるようになってきた。
徳島市によると、2021年度に市が扱った「燃やすごみ」のうち約37%がリサイクル可能な「雑がみ」類だったという。市当局はこの「雑がみ」を分別して資源ごみにしたいと考えている。ただし“ごみ”の分別は予算化せず、住民の努力やパワーに頼りたいという本音も見え隠れしている。
「燃えるのにわざわざ資源として分別するのは面倒くさい。ちょっとくらいなら仕方ない」というのは市民の平均的考えだ。しかし、いらなくなったものを捨てる時に「資源化するのか?」「燃やすのか?」と一人ひとり聞きまわり、「資源化意識の醸成」をするという決断が必要であると考え、「燃える」ではなく主体的な行動を表す「燃やすしかない」に変更することで、市民の意識変革を目指している。
近年の“ごみゼロ”運動は、ごみをまったく出さないということではない。“ごみ”を「不要なものだから捨てる」から、「新たな価値を生み出すものなので収集する」へと変容させる発想だ。
全国の自治体では家庭ごみの収集を有料化する動きも広がっている。有料化を実施する多くの自治体は、指定した有料ごみ袋を購入させることで有料化を行っているが、これはごみを出す量に応じて処理費用を一部負担してもらう仕組みだ。住民が負担を軽減しようとすると、結果循環型社会に貢献することになると期待しているようだ。
日本では「護美(ごみ)箱」を「資源箱」と先ず書き換えることが必要だろう。

| 23.06.16

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