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私鉄連結

3月18日、東急電鉄と相模鉄道が相互直通運転する「新横浜線」が開業した。首都圏では2010年開業の成田スカイアクセス線以来13年ぶりの大型新線の登場だ。羽沢横浜国大駅から新横浜駅で新幹線に接続し、新綱島駅を経て日吉駅で東急東横線に接続する。これにより神奈川・東京・埼玉3都県7社14路線の広域鉄道ネットワークとなり、相模鉄道は悲願だった東京まで延伸する。
新線の開業で乗り入れ駅は、目黒線直通列車が武蔵小杉、奥沢、目黒、赤羽岩淵、浦和美園、高島平、西高島平の7駅、東横線直通列車では渋谷、新宿三丁目、池袋、和光市、志木、川越市、森林公園、小川町の8駅が追加され、新横浜行きと合わせて行き先が16駅増加となった。
SNS上では「行き先だけではどの路線に乗り入れるのか分かりにくい」「川越行きと川越市行きがあって迷う」などの指摘が相次いでいる。
世界ではおよそ170の都市で地下鉄やそれに準ずる都市鉄道が運行されている。東京の地下鉄の総延長は営団と都営を合計して約300kmだが、「私鉄連結」ネットワークとしてみると 2314kmと巨大だ。ちなみにこの連結で東京の地下鉄の利用者数は世界一になるそうだ。
世界の大都市の地下鉄路線距離ランキングをみると、1位上海 約630㎞、2位北京 約570㎞、3位ロンドン 約400㎞、5位ニューヨーク 約390㎞、7位ソウル 約380㎞、8位が東京 約300㎞だ。東京以上の路線距離を持つ地下鉄網が少なからず存在するが、地下鉄に繋がる「私鉄連結」が2000kmを上回るのは東京圏だけ。しかもこれとは別にJRもあるのだから、東京の路線図とダイヤがクレイジーだと言われる所以だ。
路線図はお世辞にも利用者に優しいとは言えない。同じ線路に行先が全く違う列車が走るのだ。しかも自社の乗り入れ範囲のみを示した自己顕示欲の強い路線図を作成し、デザインもマチマチ。1枚のICカードで私鉄、地下鉄、JRが共通利用できるのは良いが、全線網羅の路線図はインバウンド観光客には解読不可能なカオスだろう。
グレーター東京3千万人のための「私鉄連結」網は、規模において2位上海の4倍以上の巨大さだ。これを作り上げて分刻みの時刻表で運行する奇跡はいかなる国の追随も許さない。
しかし皮肉なことに、それを初めから意図していたとは言えないところが日本の弱点だ。全てにマスタープランがない国“日本”は何処へ向かうのだろうか?

| 23.04.14

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