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彌生コラボ

表参道のルイ・ヴィトンに先日、その意外性ゆえに日本人として世界で最も尊敬されるアーティスト草間彌生がヒューマノイドロボットで登場、異様なコラボレーションが時代を牽引するブランドのイメージに強烈なインパクトを加えた。パリのヴァンドーム、ニューヨークの5番街、ロンドンのハロッズとニューボンドストリートに続く5店舗目のパフォーマンスだ。
同時に発表されたモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)の2022年の決算は、売上高が前期比23.3%増の791億8400万ユーロ(約11兆857億円)、営業利益は22.4%増の210億100万(約2兆9401億円)ユーロ、税引後の純利益は17.0%増の140億8400万ユーロ(約1兆9717億円)、と過去最高を叩き出した。
中でも「ルイ・ヴィトン」は単独売上で初めて200億ユーロ(約2兆8000億円)を突破し、力強い成長を見せた。フランス市場が前年比47.6%増、フランスを除く欧州は28.9%増、米国29.8%増、日本24.0%増と、いずれも大幅な2ケタ成長だ。ユニクロの売上は前年比7.9%増の2兆7000億円であるから、ラグジュアリーブランドが成長率と売上げでユニクロを上回ることになり、異常とも言える事態だ。
ベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)は投資家向けの電話会議で、コロナ禍や地政学的状況の厳しい困難な時期にありながら、LVMH は2019年以来シェアを拡大していると語り、自社製品の「品質と価値」を強調した。現在73歳の彼自身もフォーブスのリアルタイム世界長者番付でトップの座に君臨している。ラグジュアリーブランドのオーナーが並いるIT長者を差し置いて世界一のビリオネアだというのが現実だ。
ルイ・ヴィトンが草間彌生とコラボするのは10年ぶりだという。今回のコラボは、ルイ・ヴィトンの高品質なアイテムが、ペイントやシルバーの球体によって表現された草間作品の“水玉”と共鳴し、さらなる高みへと導いている。そもそもルイ・ヴィトンとアートの関係は100年前から続いている。特に1988年以降はソル・ルウィット、村上 隆、ジェフ・クーンズなど著名な現代アーティストを招き、斬新なコラボレーションに取り組んで来た。
このコラボは現代アートがどれだけ凄い力を持つものかを示すと同時に、クレディ・スイスのウェルスレポートが示すように、世界の分断と貧富の差がコロナ禍で更に拡大し、今やトップ1%の富裕層が人類の富の5割以上を握る現実が固定化したことを改めて知らしめたと言える。

| 23.02.10

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