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無免許時代

今年7月1日の道路交通法改正によって、電動キックボードが免許不要となる。16歳以上なら利用可能でヘルメット着用も努力義務とのこと。頭の硬い日本の警察がよくここまで譲歩したとビックリした人も多いだろう。
電動キックボードは現在導入試験中で、原付バイク(原動機付き自転車)と同じく運転免許証、ヘルメット着用、自賠責保険加入、ナンバープレート装着が義務付けられているが、この改正で「特定小型原動機付き自転車(特定小型原付)」という区分に入り、免許が要らなくなる。
ただし最高時速は20km以下に制限され車道・自転車レーン・路側帯走行が義務付けられる。自賠責保険への加入、ナンバープレートの取得は現在と変わらず必須だが、最高速度を6kmにすると、識別灯火を条件に歩道通行も可能になるとのこと。クルマ運転者と歩行者にとっては恐怖だが、電動キックボードの利用者にとっては“めちゃくちゃ自由で便利”な法規だ。加えてこの4月から「レベル4」自動運転車の公道走行が可能になる。乗客が行き先を指定すれば、道路交通法に基づく免許証保持者が乗っていなくても、車載のAI自動運転システムがクルマを運転して目的地に届けてくれる。思ったよりも早くAI自動運転タクシーの時代が来るようだ。
自転車は道路交通法では「軽車両」と規定され、速度制限はないがクルマと同様に道路標識を守る義務がある。日本では電動アシスト付き自転車(速度制限24kmまで)も同じ「軽車両」で、これが足漕ぎ自転車感覚で全ての道を縦横無尽に走っている。一部歩道は制限されているが歩行者と同じ感覚で歩道車道お構いなし、一方通行逆走や子供を前後に乗せての歩道爆走も日常茶飯事だ。
今回の道路交通法改正は、世界に先駆けて「無免許時代の到来」を告げる快挙なのか暴挙なのか?クルマ運転車と歩行者にとって日本の道路が世界一危険な交通環境になったことは確かだ。世界一高度なAI自動運転プログラムが必要とされる。
先日、トヨタ自動車の社長が突然辞任した。退任の弁は「自分はクルマ屋だ。これからのモビリティはもっと若い人の感性で車を超えていかなければいけない」、とAI自動運転技術が支配する「無免許時代」の到来を示唆するものだった。
豊田章男社長は「運転の楽しさを失いつつあるモビリティ社会は、もはやクルマ屋が作るべき世界ではない」と言いたかったのだろうか。

| 23.02.03

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