BeReal
2017年に”インスタ映え”が新語・流行語大賞を取って以来、SNSは「如何に映えるか」が重要で、“映え” と共に進化してきたと言っても過言ではない。そうした中、2022年夏のAppストアでMetaやWhatsAppなど並み居る人気アプリを抜いて、突如「BeReal」がダウンロード数No.1に躍り出た。
「BeReal」はAlexis BarreyatとKevin Perreauが2020年にフランスで創業した、画像共有ソーシャルアプリだ。重要視するのは投稿内容の真正性(Authenticity)、つまり「ありのままの自分」を表現することだ。
これまで“映え”重視のキラキラしたフェイク動画や写真とリアルな現実とのギャップに悩む「SNS疲れ」を感じていた人も多かったようだ。「BeReal」では投稿は1日に1回しか許されず、アプリから通知が来たタイミングで2分以内に写真を撮ってシェアしなければならない。フィルターなどの機能は無く、写真はスマートフォンのインカメラとアウトカメラだけで撮影するため、ユーザーがその瞬間どんな表情で何を見ているのかが生々しく写る。しかも公開されるのは友人間のみで、投稿されると前の投稿は消えていく。この潔さが“映え”に疲れた若者の心を掴んだのだ。
化粧品メーカーのマンダムが2022年3月に日本の15歳から29歳女性を対象にSNS用写真について調査したところ、ビューティ系アプリで自分の顔画像を加工する女性が8割以上だったそうだ。またデジタルネイティブの10代はコミュニケーションや情報収集などをSNS上で活発に行っており、対面コミュニケーション以上の時間を費やしている。そうなるとSNS上で加工された自分も自分だが、リアルの自分とSNS上の自分を近づけたいと思うのも自然だろう。加工した写真ばかりでなく現実の写真も残しておけばよかったと後悔することもあるようだ。
「BeReal」の注意書きには「これで有名になることはできない。インフルエンサーになりたければTikTok や Instagramでどうぞ!」と書かれている。時にはみっともない姿もさらす「BeReal」の流行は、せめて親しい友人にだけは「本当の自分をわかってほしい」というデジタルネイティブ世代の心の叫びなのか。
加工された“映え”がリアルでは生きづらい人々を救ったと思われたのも束の間、メタバースで生きるのも大変なのだ。最後はやはり「Real」に戻るのだろうか。
| 22.12.16