ベニクラゲ
人類が太古より探求してきた不老長寿に関する最新の知見をまとめた『不滅のクラゲ(Jellyfish Age Backwards)』が今話題だ。著者であるコペンハーゲン大学の分子生物学者ニクラス・ブレンドルグは、人間の寿命を200年、300年にすることは不可能ではないと断言している。その根拠として注目しているのが「ベニクラゲ」の生態だ。
「ベニクラゲ」は命の危機を察知する度に若返るのだという。「死ぬ」代わりに「ポリプと呼ばれる幼体に戻り」、また同じように生まれ直して成長して戻ってくる。これを一度ではなく何度も繰り返しているというのだ。
「同一の遺伝子=同一の個体」という原則に基づいて何度も若返るというのがベニクラゲの「不老不死」の解釈で、自分のクローンを新陳代謝で作るメカニズムの研究が「人類の不老不死」の開発に繋がると考えられている。
一方9月11日に放送されたテレビアニメ『サザエさん』に、世間はにわかにザワついた。一家の長である波平が自分の年齢を54歳だと言ったことで、SNS上では「そんなに若いの?」「えっ福山雅治とひとつ違い!?」「もっと年でしょ」と当惑の声があがったのだ。
サザエさんの原作は昭和21年、そして家族の見た目は当時のまま放送が続いてきたので波平は年をとらず、シナリオは令和4年の現在を描く。そこにギャップが不思議な安心感として醸し出されるのが人気の元なのか。
「不老不死」のうち「不老」は化学の進化によってかなり実現された。栄養・健康状態の改善などで、70年以上前に54歳の波平と現在53歳の福山雅治とでは当然大きく見た目が違う。「不老」は急速に達成されてきたと言える。
またグーグル創業者のラリー・ペイジやアマゾン創業者のジェフ・ベゾスらシリコンバレーの成功者たちは、「不老不死ビジネス」に次々と惜しげもなく投資している。今後分子レベルを超えた細胞ベースの治療法が出回り、超富裕層はその効果を真っ先に試すだろう。ビリオネアは何百年も生き、それ以外の庶民は平均寿命で終わるという時代が来るのか。
そういえば昔若くて話題になった米国大統領も、最近は結構な年で再選を狙っている。先ごろ亡くなった中国の元国家主席やマレーシアの元首相も100歳に届くかという年齢だった。日本の連立与党を支える某宗教団体の指導者に至っては既に「不死」の段階に入っているとも聞く。
人間の「ベニクラゲ」化とは不死身となることではなく、自分や周囲の意思で寿命を延ばすかどうかを決める?ことなのかもしれない。
| 22.12.09