Sphere(スフィア)
高島屋が新年1 月2 日の初売り福袋の目玉として「Sphere(スフィア)3Dプリンターハウス」の販売を予定しているそうだ。「Sphere」は兵庫県に本拠を置く住宅系スタートアップ企業のセレンディクス社が意匠出願を行った“未来デザイン住宅”で、3D プリンターを使って24時間で作り上げることができるという。
今回計画中の約10平米のタイニーハウスの素材はコンクリートで、日本よりも厳しい断熱性能のヨーロッパ基準をクリア。リブ補強がされた2 重構造の球体デザインは、物理的にも耐震強度が高い設計になっている。ただし屋内での電力使用は可能だが水回りの対応はこれからだ。
「Sphere」の近未来的なデザインは、ニューヨークのチャイナタウンを拠点に活動する建築家・曽野正之氏によるもの。彼のチームがNASA主催の火星基地設計コンペで、「宇宙線から居住者を保護する」「資材は現地調達」「3Dプリンターで建設可能」などの条件下、外壁を火星の氷でつくる「マーズ・アイス・ハウス」のコンセプトを提案、優勝したことでも有名だ。NASAに評価されたことで、セレンディクスパートナーズ(現セレンディクス)の目に留まったようだ。
日本の戸建住宅は欧米に比べて割高で、日本経済最大の障害は500兆円を超える住宅ローン残高だと言われて久しい。30代40代の働き盛りの国民の経済力は、30年以上にも渡って小さな “家”の支払いに吸収され続けているのだ。しかも日本の住宅は欧米に比べ耐用年数が約40年と半分しかなく、中古マーケットが全く育っていない。
すなわち、ローンを返し終わった頃には価値が半減し、中古住宅が値上がりする欧米に比べ住宅が資産形成に全く役に立っていないことになる。
その上、日本では木造住宅建設の担い手である大工就業者数の減少が深刻で、日本建設業連合会によると2010年には約40万人まで減少、2025年までに更に半分に減ると言われている。建設作業員の高齢化で人手不足が進むことで、今後建築コストの大幅な上昇も見込まれる。
「Sphere」は日本の住宅供給に革命をもたらすだろう。3Dプリンターが近い将来50平米300万円、100平米500万円ほどの家を24時間以内?に市場に投入できるようになる可能性があり、耐用年数も倍増させる時代の到来を予感させる。
価格破壊と資産形成の実現で家を「一生の買い物」から解放し、住宅ローン支出をエンターテイメント支出に変えていく時代がやってくるだろうか。
| 22.11.11