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ゲップ税

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は10月11日の定例記者会見で、世界気候変動対策のため家畜のゲップやおならによるメタンガス排出に対して農家に「ゲップ税」を課税する方針を発表した。カーボンニュートラル絡みのギャグかと思われたが、どうやら本気のようだ。
昨年11月にスコットランド・グラスゴーで開かれたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、米国をはじめEUや日本など100以上の国が2030年までにメタンガス排出量を2020年比で少なくとも30%削減することで合意したが、これを受けての対応とのこと。もちろん農業従事者団体は激しく反撥しているという。
今年に入って4月7日に米国海洋大気局(NOAA)が、2021年の世界のメタンガス排出増加量が過去最高となる見通しを発表、メタンガスが及ぼす気候変動に警鐘を鳴らした。
世界が知るべきは、メタンガス排出量には石油や天然ガス生産・使用からの漏出などのエネルギー部門と、家畜の消化管内発酵(いわゆるゲップ)などの農業部門があり、それぞれ約4割を占めるということだ。
ニュージーランドの人口は約500万人と少ないが、家畜や食肉の輸出大国で、国内の畜牛は約1000万頭、ヒツジは約2600万頭と人口をはるかに上回る。同国のメタンガス総排出量の半分は農業が占め、その91%は家畜由来のメタンガスである。そしてゲップで排出されるメタンガスには二酸化炭素の数十倍を超す温室効果がある言われるため、一見自然豊かなニュージーランドやオーストラリアは、実は温室効果ガスの排出では世界ランキング上位国なのだ。
アメリカの人気レシピサイト「epicurious」も昨年、気候変動への懸念から牛肉を使った新しいレシピ公開を止めると発表した。牛肉料理よりも持続可能な食事を促すため、牛肉を使った新規レシピの掲載や記事、ソーシャルメディアの投稿はなくす方向だという。肉食大国アメリカですら食べ方に大きな変化が起きている。
最近アメリカのインテリ層ではImpossible Foods社などのプラントベースミート(代替肉)への関心が高まっている。バーガーキングでも代替肉パティを使った「Impossible Whopper」を全国展開しているほどだ。
家畜のゲップ排出でも圧倒的な大国であるアメリカと中国が、農業部門のメタンガス排出規制にいつ踏み込むのか?本丸はこの2カ国だ。

| 22.10.21

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