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デジタルノマド

「デジタルノマド」が世界中で増殖している。PCやiPadなどのデジタルデバイスを駆使して場所を問わずリモートで仕事をし、ノマド(遊牧民)といわれるだけあってIT環境さえあれば好きなところに居場所を変えて働く。
本コラムでも2017年に「トランスヒューマン」http://www.artbox.co.jp/news/2017/03/post_254.html
としてジャック・アタリが提唱した「超ノマド」を取り上げたが、現代の「デジタルノマド」はそれが更に一般化し、世界を放浪?しながら暮らすスタイルが定着してきたことを示している。その数はこの3年間で3倍に増加、2035年には10億人に達すると予想される。
米国シンクタンクのピュー・リサーチ・センターの「在宅勤務の増加など勤務形態の変化に関する世論調査」よると、米国で現在リモートワークをしている人のうち、新型コロナ終息後にも在宅勤務を希望する人の割合は60%。2020年10月の調査結果が54%だから、1年で6ポイントの増加だ。結果、米国で2021年に「デジタルノマド」として生活する人は約1500万人となり平均年齢は32歳、そして「デジタルノマド」ライフを希望する予備軍は約2400万人いるとされる。
一方「デジタルノマド」を国策で後押しする国も増えている。中でも興味深い取り組みが、特別な滞在ビザの発給だ。世界で多くの国と地域が「デジタルノマド」を奪い合っている中、長期滞在ビザの提供による経済効果は大きい。ネット環境が整ってさえいればどこででも仕事ができるデジタルノマドは、長期滞在型のホテルや民泊アコモデーションのヘビーユーザーになるからだ。
デジタルノマド用に特別ビザを用意している国は現在およそ45カ国だが、その数は更に増加している。例えばドイツは観光滞在で90日以内はビザ不要だが、出身国での収入証明書と健康保険があれば、リモートワークが可能な6カ月から最大3年間のデジタルノマドビザが発給される。
ポルトガルでは大西洋の真珠とも呼ばれるマデイラ諸島やポルトサント島にノマドライフのためのコミュニティーまであり、積極的に「デジタルノマド」を呼び込もうとしている。
2017年のジャック・アタリの指摘通り、未だに日本はこれらの取り組みが遅い。相変わらず観光インバウンドの人数を増やすことばかり考えているようだが、実質滞在日数が長い「デジタルノマド」を恐れているのか。

| 22.10.07

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