アイムドーナツ?
近頃、フレーバーバリエーション豊かにカラフルなドーナツを並べる店があちこちに誕生し、行列ができている。第三次ドーナツブームとも言える現象だ。
東京・中目黒駅の「I’m donut ?」は、福岡・六本松で人気を誇るベーカリー「AMAM DACOTAN(アマムダコタン)」がオープンしたドーナツ店だ。オーナーシェフ・平子良太氏はマリトッツォブームの火付け役としても知られている。
2020年に池袋の住宅街にオープンした「Racines Bread & Salad」もいつも行列が絶えない人気店だ。季節のフルーツ入りソースをかけた、ふわふわで滑らか、くちどけがよいドーナツを都内4店舗で1日平均5000個売り上げる。週末には午後2時過ぎに売り切る人気ぶりだ。
今回のブームは、ブリオッシュの発酵生地を使ったふわふわなドーナツと、豊富なソースバリエーションが特徴だ。ドーナツがアメリカでチェーン展開され始めたのは第二次世界大戦後の1950年前後だが、ケーキ生地を揚げたミルクドーナツで大流行し、戦後世界中に「栄養のあるおやつ」として広まった。当時アメリカでは「主食」として朝食に食べる人も多く、エルビス・プレスリーの大好物として一躍注目を浴びた時代でもあった。
日本へは1971年にダンキンドーナツとミスタードーナツが上陸して競い合う。ダンキンは百貨店資本が経営、凝りすぎて1998年には撤退してしまったが、ミスドは本格的コンビニスイーツの猛追を受けながらも、日本人に合わせた独自色のあるフランチャイズで生き残っている。その後2006年には「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が上陸しているが、プロモーション過多でパッとしなかった。
これまでのドーナツはアメリカからの直輸入でカロリー過多、不健康なイメージが強かった。第三次ブームのそれは、日本人シェフやパティシエの技術によって味わい豊かで健康にも優れた食品として生まれ変わっている。さらにラシーヌをはじめとするドーナツ店は、食材ロスを抑えたり国産のオーガニックな食材を使ったりと見えない努力を重ねている。
北海道の食材を使う学芸大学の「HIGUMA Doughnuts」や、ヴィーガン100%のベーカリー、下北沢「Universal Bakes Nicome」のドーナツも人気だ。高質で食感もよく、健康志向でファッション性もある、その上で人類が直面する社会問題にも対応しようとしているのだ。
ドーナツから世界の食が見えるようだ。たかがドーナツと言うなかれ!
| 22.06.03