神棚アプリ
先日亡くなった米国第64代国務長官マデレーン・オルブライト女史は、チェコ出身の民主党員で初の女性国務長官になったことで知られる。彼女が「ピュー・グローバル・アティチューズ・プロジェクト (Pew Global Attitudes Project)」という調査機関を運営していたことは余り知られていないが、様々な問題に関する世界の人々の意見を知ることを目的とした、この機関の公開意見調査は有名だ。
2018-19年に米国の成人対象に「自分が信じる宗教は何か?」という調査が行われたが、「キリスト教」と回答した人は65%で10年前と比べ12ポイント減少。逆に「無神論」と答えた割合は前回の17%から9ポイント増え、26%にもなったそうだ。
米国のキリスト教はプロテスタント系がメジャー、ケネディやバイデンのようなカトリック系はマイナーで、無神論者のほうが明らかに多くなったのだ。しかも20代30代は日曜日のミサには行かず、旧来の信者のつながりよりもネット(SNS)上のコミュニティを求める傾向があるという。アップルやグーグルなど大手IT企業で従業員の教育に瞑想が取り入れられ、マインドフルネスや禅への関心が高まっているのもその現れだろうか?
日本国内の神社ではインターネットを使った宗教活動はまだタブーとされる。しかし同じ神社でも諸外国にある神社、例えば米国の「椿大神社(Tsubaki Grand Shrine of America)」や「出世稲荷神社(Shinto Shrine of Shusse Inari in America)」などでは、独自のオンラインコミュニティが形成されている。神事や祭典をライブ配信し、行事予定をSNSで発信して活発に活動しているようだ。
外国人の場合、もともと日本の大衆文化やメディアを好きになったことがきっかけで“神道”に興味を持つ場合が多い。神道は日本文化をより深く理解するための手段でもあり、アニメやビデオゲーム、武道、観光などと同列で神道に出会うとも言える。
他の組織宗教と異なり、神道には「創始者、教義、聖典」がない。そのためヒエラルキーや教義に縛られることなく、個人的に心に響くことを優先できるところに「スピリチュアルだけれども宗教的ではない」魅力を感じるようだ。神道が“儀式”に重点を置いていることも高く評価されている。戦後、神社は国家神道から切り離され、民間の宗教法人として多様性を持つ公共的な役割を担うようになった。
「神棚アプリ」が原始神道として「無宗教」と答えた米国人の心を掴むのも時間の問題だろう。
| 22.05.06