元服
改正民法が4月1日に施行され、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。同日までに20歳に達した人に加え、約200万人に上るとみられる18歳19歳も一斉に成人となった。
成年年齢を下げることにより社会の活性化を後押しするというのが改正民法の大義名分だが、実際には新成人に選挙権が与えられることが最も大きな変化であろう。飲酒と喫煙が許されるのは今まで通り20歳からだから、経済波及効果は限定的だ。
成年年齢を20歳と定めたのは明治政府だが、江戸時代までの日本では15歳ぐらいで大人になる「元服の儀式」が行われていた。「元」は首(=頭)、「服」は着用を表し、「頭に冠をつける」という意味で「加冠」とも「初冠(ういこうぶり)とも言われる。
男子の場合は、それまで頭頂をあらわにしていた男児に成年を象徴する冠をつけさせた。髪形や服装を改めることで、社会的に一人前になったことを示すのだ。「元服」には社会に養われている立場から社会を支える側に回る、と言う意味もあったようだ。女性成人にも「裳着(もぎ)」という儀式があり、結婚できる大人になったことを意味していた。
ちなみにOECD(経済協力開発機構)が2016年に行った加盟国の成人年齢調査によると、35の加盟国のうち32の国が成人年齢を18歳と定めている。イギリスではヨーロッパ諸国の中でも早い1960年代に、それまで21歳だった成人年齢を18歳に引き下げた。1974年にドイツとフランス、1975年にはイタリアなどが18歳に引き下げている。アメリカでもベトナム戦争がきっかけとなり、1972年のカリフォルニア州とミシガン州を皮切りに、徴兵年齢に合わせて順次成人年齢が18歳に引き下げられた。同時に選挙権年齢も18歳に引き下げられるなど、これには政治事情が深く関係していると言えそうだ。
今回の改正民法がこの夏の参議院選挙にどう影響するのか興味津々だ。日本では投票率がドイツのように60%を超えると、浮動票=民意の反映で政権与党が崩壊するとも言われている。その結果を恐れてなのか日本の政治家は2世議員と芸能人崩れが多い。政権与党がおニャン子クラブからの立候補者をもっともらしく記者会見で発表するとは情けない。
若者の政治参加を利用して有名人で議席増を狙うとは本末転倒、寂しい限りだ。戦後80年近く経ってもアメリカから真の自立を獲得できない、大人になりきれない国。
「元服」が本当に必要なのは国としての“日本”なのではないだろうか。
| 22.04.15