マクロスセキュリティ
あまり知られていないが、2月1日から3月18日までは内閣府主導の「サイバーセキュリティ月間」らしい。今年は40周年を迎える人気ロボットアニメ「マクロス」とタイアップ、そのキャラクターを使って展開している。
内閣府によると「サイバーセキュリティ月間とは、誰もが安心してITの恩恵を享受するために国民一人ひとりがセキュリティについて関心を高め、サイバー攻撃から身を守るようになるための普及啓発活動」とのことだが、「マクロス」にあやかった啓発活動は「春の交通安全週間」のようであまり緊張感がない。
これまでもタイアップ先に「約束のネバーランド」(19年)、「ソードアート・オンライン アリシゼーション 」(20年)、「ラブライブ!サンシャイン!!」(21年)を選ぶなど、なぜかアニメとのコラボ企画が多い。
今年はその真っ只中の2月24日、ウクライナに対するロシアの軍事侵攻が始まった。サイバー空間にも数多くの民間人やハッカー集団が加わって、あたかも世界大戦の様相だ。いくつものハッカー集団が名乗りを上げてロシア国防省などの政府機関や銀行、同盟国のベラルーシに対し大規模な攻撃を仕掛けている。
ウクライナ政府も、民間のサイバーセキュリティ専門家に重要インフラ防御とロシア軍へのサイバー攻撃支援を要請、世界中から500人近くがすでに参加(参戦?)しているという。
国際ハッカー集団「アノニマス」も軍事侵攻直後にTwitterでロシア政府へのサイバー攻撃を宣戦布告、クレムリンや国防省、ロシア国営テレビ局「RT」のウェブサイトをダウンさせたと戦果を発表している。こうした事態の煽りかトヨタの主要取引先が巻き込まれ、結果トヨタは国内の全工場を停止する羽目になった。
NATO諸国や米、中、露、イスラエル、北朝鮮といった国々は高度なハッキング能力で、これまでもそれぞれがサイバー空間での戦いを展開してきている。
サイバー攻撃は直接的に人命を奪うものではないが、米国はサイバー空間においても先制攻撃を禁じる国際法に則るべきだと主張してきた。しかしロシアと中国は米国の主張を全面的に拒否している。
こうした国際情勢の中、日本の呑気な「マクロス」キャンペーンには浮世離れしたズレを感じる。内閣府の「サイバーセキュリティ」意識は、サイバー空間でも日本は四方を海に囲まれていると考えているかの如くだ。
国民とその生活をサイバー攻撃から守ろうという時に、何か防空頭巾をかぶる訓練をしているような時代錯誤感がある。
| 22.03.11