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マリトッツォ

生クリームをパンにたっぷり挟んだローマのお菓子「マリトッツォ」が昨年から巷で人気を博している。
楕円形のパンの切り込みに生クリームをギッシリ詰めたローマ名物「マリトッツォ」は、イタリアではバールのカウンターで立ったままコーヒーと合わせて頬張ったり、少しコーヒーに浸して食べたりするシンプルな朝食の一つだ。
インスタグラムで「#maritozzo」を検索するとありとあらゆる画像が出てくる。そのほとんどが日本人の投稿であることにイタリア紙「ラ・スタンパ」が驚いている。カフェや洋菓子店だけでなく、おやつに食べられるように包装された「マリトッツォ」がコンビニの店頭に並んでいるのを知って、「生クリームがどのようにフレッシュさを保つのか疑問だ」とも指摘する。しかしそうした声をよそに、日本のデパ地下ではご飯にネギトロを挟んだ「寿司トッツォ」なるものまで登場しているのだ。
「マリトッツォ」の次なるヒットは、同じくイタリアの国民的スイーツ「ボンボローニ」になると噂される。日本人はどうしてここまで他国の伝統的スイーツを自分のもののように愛せるのだろう?
スイスの多国籍企業「ネスレ」から世界へと広まった「キットカット」も同様、もとはイギリスで誕生したチョコ菓子だ。日本市場に入ってきた当初は苦戦を強いられたものの、「キットカット」が「きっと勝つ」の語呂合わせとして広まるや、幸運の印として神社やお寺のお守り札の代わりにまでなった。現在ではご当地ものも加わって300種類以上のフレーバーが開発され、スイスのネスレ本社には到底理解できない、すごい展開になっているのだとか。
世界各国は独自の食、旗や言語、民族衣装といった「文化的記号」を大事にすることで、自国の独創性や民族的な一体感を明確にしようとするが、それがもとで紛争になったりもする。
しかし日本においては食の示すアイデンティティが恐ろしく流動的で曖昧だ。「マリトッツォ」ブームも「キットカット」も、日本人の異文化への果てしない寛容性を示している。
原爆を落とされてもアメリカを受け入れよう?と努力する国の「マリトッツォ」好きに表れる感性は極めてユニークだ。戦時中の日本の侵略を今も忘れず融和できないでいる隣国とは正反対だ。
明らかに日本を嫌っている国のドラマを、レギュラー番組としてプライムタイムに何本も放送する国は世界的に見ても珍しい。
この寛容なる鈍感力は世界平和に貢献しているのか?いやその逆なのか?

| 22.02.18

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