バ美肉
昨年10月にfacebookが「Meta」へと社名変更したことで、バーチャル空間「メタバース」が一気にバズワードになった。世界的にユーザーには一種のオタクが多く見られ、日本では今「バ美肉」という言葉がトレンドになっている。
「バ美肉」(バーチャル美少女受肉)とは、美少女のアバターを纏って美少女風に振る舞うことを意味する。アバターのキャラクターになりきるためにボイスチェンジャーを使って可愛い声にしたり、さらには声帯を鍛え地声で女の子のような声を出したりする。
昨年12月にメタバース「cluster」上で開催されたライブイベント「バ美肉紅白2021」では、出演者全員が「バ美肉」らしく女声への変換技術を競った。機械的に変換するボイスチェンジャー組と、発声技術により変換する両声類組の奇妙な戦いが繰り広げられたのだ。
メタバース空間では現実の性や年齢を超越し、自分の理想の姿で過ごすことができる。現在はユーザーの7割が女性型アバターを利用、「メタ人生」を現実の肉体とは違う別人間として過ごす欲求が高いようだが、それ故の苦労もありそうだ。
こうしたメタバース市場はまだ開拓の口火が切られたばかりだが、10年後には100兆円市場に迫るとの予測もあり、米NVIDIAなど有力IT企業が続々参入してきている。
Microsoftも過去最大の買収に動き、米ゲーム大手Activision Blizzard, Inc.の獲得に687億ドル(7.8兆円)を投じたが、ソニーグループも人気のシューティングゲームを手がける米ゲーム会社Bungie, Inc.を4100億円で買収したばかりだ。
一方、年頭に米ラスベガスで2年ぶりに開催された家電見本市「CES」では、電気自動車や家電製品などと並んで出展されたメタバース関連製品が目立った。
例えばスペイン企業が発表したゲーム用のシャツは、装着すると仮想空間で撃たれた時の衝撃が感じられるという。「痛くはないが、体の中に弾丸が入ってくるような感じ」があるそうだ。メタバースでの味覚や触感の再現実験も進んでいるらしい。
1990年代以降に生まれたZ世代はスマートフォンやSNSを通じて社会とつながり始めた世代だ。2010年代以降のα世代はiPadを生まれながらに標準装備し、それをインターフェースに他人のいる「社会」を体験し、バーチャル空間で友達を見つけたりしてきた。
β世代以降は、リアルな肉体とは一体何なのか?と考え始め、人類の未来をリアルな肉体無しに想定していくのかも知れない。
| 22.02.04