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世界最高の国

米国の時事解説誌「U.S. News & World Report」が、「世界最高の国(Best Country)」ランキングを毎年発表している。2021年の1位はカナダだった。
日本は前年の3位からワンランクアップし2位、3位はドイツだ。その他気になる国では米国が6位、デンマーク12位、シンガポール14位、中国17位、ロシアが24位。日本の高順位と北欧4カ国が上位でないことに違和感を感じる人が多そうだ。
しかし「世界最高の国」ランキングはバランスが良いとされている。世界78カ国・地域の2万人以上を対象に調査、「冒険心」「市民の自由度」「文化的影響力」「起業家精神」「文化・歴史的遺産」「発動力」「ビジネスの開放度」「権力」「生活の質」の9つの指標に基づいて評価したもので、数字指標だけの統計結果ではない点も評価できる。
スコアリングに使用されるモデルは、ブランド影響力調査で力を持つBAVグループとペンシルベニア大学ウォートン・スクールのデビッド・ライブスタイン教授が、U.S. News & World Report誌と共同開発している。2021年度版は特にCOVID-19パンデミックによって変化した世界とその後の急激な景気後退、そして社会正義と不平等への取り組みを反映させるために、「敏捷性(Agility)」と「社会的目的(Social Purpose)」という2つの新しいサブランキングも設定されている。
これと対照的なのは国連の発表する「世界幸福度報告書」だ。こちらの2021年度版では日本はなんと56位である。上位国は手厚い社会保障、質の高い教育、ジェンダー平等などで先行する人口の少ない北欧諸国で、1位フィンランド、2位デンマーク、3位スイスとなる。カナダは21位、ドイツ13位、米国19位、アジアの雄シンガポールでさえ32位だ。
バブル経済崩壊後の日本は、「失われた30年」という自虐的表現で自国経済の衰退を嘆いた。あくまでも経済指標なのだが、1人当たりGDPや国民の平均年収などのランキングが気になり、勝手に日本は貧しくなったと感じてしまっている。経済が全てと考えていると視野狭窄に陥り、豊かさの本質を忘れがちだ。
例えば、伊勢神宮の式年遷宮を支える質の高い職人力を“単なる労働力”と見なさないような指標を採用したなら、失われた30年の評価はもっと変わってくるかもしれない。
日本国民に問われるのは、統計的な数字に頼らず「質を見極める眼力」であろう。

| 22.01.07

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