MONOS
韓国映画「パラサイト」が第92回米アカデミー賞国際長編映画賞を取った時、コロンビア代表作品として参加していた「MONOS」が、「MONOS 猿と呼ばれし者たち」として日本で10月30日から公開されている。「MONOS」はスペイン語で「猿たち」を、ギリシャ語では「孤独」を意味するそうだ。
監督はコロンビアの新鋭アレハンドロ・ランデスで、本作は50年以上続いたコロンビアの内戦を背景に、絶え間ない暴力の脅威にさらされる世界とそこに生きる少年少女の葛藤や焦燥、炙り出される人間の本質を大胆に描いたサバイバル・オデッセイだ。
最近内戦をテーマにした映画が注目されているのは、世界でそれだけ「分断」が進み常に何処かで内戦が起きている証拠だ。内戦自体が多くなったのか?小さな内戦でも最前線からSNSで情報が世界中に拡散できるようになったからなのか?多分両方だろう。
2001年に起きた911による米国の「テロとの戦い」宣言以降、21世紀は「分断」の時代に入った。米中ロの覇権争いを受けて、ウクライナ、チベット、ウイグル、シリア、イラン、アフガニスタン、香港、朝鮮半島、台湾海峡と紛争地域は拡大の一途だ。
「アジア最後の成長フロンティア」と呼ばれ日本を含め多くの企業が進出したミャンマーも、国連は先日内戦状態に陥ったとの認識を示した。国軍のクーデターに抵抗する民主派が、9月7日から「防衛戦」と名付けた武装闘争を開始している。「非国際武力紛争」が毎日YouTube で配信されてくる。
約20年間「地球上最後のフロンティア」と呼ばれた北東アフリカのエチオピアでも、内戦の激化で11月3日にアビー首相が全土に緊急事態宣言を発令、「最後の経済発展モデル」は脆くも崩れ去った。
そんな中発表された韓国映画「モガディシュ」は興味深い作品だ。1991年に内戦が激化したアフリカ東部のソマリアで、孤立した韓国と北朝鮮の大使館員らが協力し脱出を果たした知られざる事実が映画化されたものだ。同じ民族ながら「分断」された韓国と北朝鮮が、海外紛争地域で一つになった瞬間を描いたこの作品は、韓国国内で2021年最大のヒット作となった。
「分断」は、古代ローマ帝国が支配下に置いた都市を治めるために、都市間の連携を切り反対勢力の力を削ぐ手法として始めた。その後イギリスやフランスにより植民地統治の政治的手法として取り入れられる。統治したい国に多数の人種・民族・宗教が存在する場合、これらにあえて格差をつけて分断と不安を煽って統治するという手法だ。
最近開催されたCOP26も、温暖化を理由に「分断」を煽りながら実に巧みにグレタ・トゥーンベリを使っている点が気になる。
| 21.11.12