代替不能トークン
ブロックチェーン技術を利用した「NFT(Non Fungible Tokens)」と呼ばれる資産が注目されている。日本語では「代替不能トークン」と呼ばれ、特徴は所有権を特定できることである。ビットコインやイーサリアムなどのデジタル通貨は識別子のない「ユティリティートークン」と呼ばれ、所有者が特定できない。
今年3月12日、初めて「NFT」を扱うアートオークションが老舗の競売大手クリスティーズで行われて話題になった。デジタルアーティスト、マイク・ウインケルマンが13年かけて制作した「Everydays: The First 5000 Days」が出品され、現存アーティストで第3位となる6935万ドル(約75億円)で落札された。コンピュータ上で表現された単なるデータについた値段としては史上最高額となった。
続いて3月22日には、ツイッター創業者ジャック・ドーシーが2006年3月に最初に投稿したツイートが291万ドル(約3億1700万円)で落札された。
デジタルデータは所有者情報が特定されないと価値を生まない。「NFT」はデジタルファイルにタグ付けすることで、「たった一つのオリジナル」と識別させることが可能になったのだ。
1766年創業のクリスティーズは今回のオークションについて、「まったく未知の領域に足を踏み入れた」とコメント。同時に暗号通貨による決済も受け入れ、不可避の流れに抵抗せず「恐怖を受け入れる」ことが最善と判断したと発表している。そして世界最大のNFT取引プラットフォーム「オープンシー」は、アートの取引をはじめとするあらゆる分野で拡大する気配を見せる。
コロナ禍のニューノーマルは人々にオンラインで過ごす時間を強要する。また一部の人にもたらされた金余り現象は、株式やビットコインなど供給量の限られた資産の価値を相対的に押し上げる。「NFT」の熱狂の中心は設立間もないスタートアップ企業だ。そして米国サンフランシスコ・ベイエリアにあるIT企業のIPOによって生まれた多額の資金が殺到している。
そうした中、日本でも9月1日に「デジタル庁」が始動したが、こういう世界の新しい“価値創造の動き”にピントは合っているのだろうか?
たとえバブルであろうと恐怖であろうと、新しく挑戦する若者を理解することが大切だ。1776年創業の企業でさえ生き残りのために挑戦しているのだ。米国は既にデジタル投票で国政選挙をするところまで来ている。
日本政府は次回総選挙をデジタル化するくらいの勇気と技術力を持っているのか?そういうスピード感が閉塞する状況を打破し、日本の未来を切り開く。
| 21.09.03