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美術館力

東京国立近代美術館は企画展「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」を、2021年6月18日(金)から9月26日(日)まで開催している。これまで世界20以上の国で数多くのプロジェクトを手がけてきた建築家・隈研吾、そのプロジェクトを5つの原則に分類して紹介するものだ。
隈自身は2018年に東京ステーションギャラリーで、やはり企画展「くまのもの」を行っている。今回は「公共性やパブリックスペースをテーマとし、建築物や『ハコ』ではなく建築と建物の間の隙間にフォーカスした」とか。結果は上々で、東京近代美術館の常設展では到底呼び込めない世代の入場者が訪れている。残念ながら、ついでに?常設展の方を見る人はほとんどいないようだ。常設展のレベルがお世辞にも良いとは言えないのが問題だ。
イギリスの美術月刊紙「The Art Newspaper」が、コロナ禍前2019年の世界の展覧会の1日の来館者数ランキングを発表している。観客数1位と2位は、ブラジル・リオデジャネイロのブラジル銀行文化センターで開催された「Dream Works」。面白いことに上位10位以内にブラジルが4つ、日本の展覧会が3つ含まれるという結果だった。
東京都美術館で開かれた「ムンク展 共鳴する魂の叫び」が4位、5位は同美術館の「クリムト展 ウィーンと日本1900」、7位には東京国立博物館の「国宝東寺 空海と仏像曼荼羅」が入っている。
有料の展覧会に限ると、日本の美術館企画展が世界で最も集客しているようだ。上位30位まで見ると、日本から11もの企画展がランクイン、次いで米国7、ブラジル5、フランス4となっている。
常設展はコレクションが数十万点規模におよぶ大型美術館が多い欧米が圧倒的に有利だ。膨大な量の作品を蓄積してきた欧米の美術館は、コレクションのほんの一部を組み合わせるだけで質の高い企画展ができる。
人気の高いルーヴル美術館や大英博物館、メトロポリタン美術館では、常設企画展だけで年に数百万人もの入場者を集めている。アジアでは常設展を見に美術館へ足を運ぶ人はきわめて少なく、台北の故宮博物院と奈良の正倉院だけが別格だ。
コレクションのレベルでは博物学の歴史が長い欧米に敵わないが、美術への興味は日本人も引けを取らない。しかし日本が次世代に引き継ぐべき現代美術作品コレクションの予算が少ないのが気にかかる。国立美術館のコレクションを充実させることは経済大国の務めでもあろう。
新しい文化庁長官は幼少期をヨーロッパで過ごしているというが、少し期待してもいいのだろうか?

| 21.07.09

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