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パンタク

コロナ禍で不要不急の外出自粛が求められてそろそろ一年。その間、昨年4月に焼きたてパンの宅配という新しいサービスが登場した。
(株)カノエが始めたパンの宅配サービス「パンタク」がそれだ。「寝起きの体を目覚めさせてくれる、ふっくら焼きたてパンの甘く香ばしい香り。お店が作るプロの味が、外出せずに家で食べられる」がコンセプトだ。
宅配エリア内の複数のパン屋から20種類のパンが選べ、週ごとにメニューもチェンジ。LINEのお友達登録から注文するシステムで、非対面の“置き配”であるため忙しい朝でも誰とも接触せずに焼きたてパンを受け取ることができる。宅配エリアはまだ目黒区・世田谷区・渋谷区の一部エリアと限定的だが、今後全国に広がりを見せそうだ。
日本のパン屋は郊外や地方でも素晴らしく凝っている。フランス人もびっくりのハード系にこだわったお店が「ポツンと一軒家」的にあったりする。例えば飛騨高山の「TRAIN BLEU」や湯河原の「ブレッド&サーカス」だ。一昔前の東京や横浜、神戸、京都エリアにもあったかどうかのレベルが、津々浦々に出現している。
日本のパン作りは明治維新直前の外国人居留地で始まった。1862年の「ヨコハマベーカリー」は、1899年には現在の「ウチキパン」の前身「字千喜商店(うちき)」となり、神戸では1905年に後に「ドンク」になる「藤井パン」が開店している。
日本での本格的パンブームは戦後80年代からで、ドンクやサンジェルマン、アンデルセン、神戸屋等が全国展開。その後フランス直輸入の小麦粉にこだわったカイザーやポールが出現し、さらには本場の味と比べても遜色ない日本独自のパン屋が登場することになる。
当初はヨーロッパのようにパンを長く保存して食べるという食習慣がなかったため、パンの皮が固いハード系という観念が無く、ソフト系のパン、即ちあんぱんやクリームパンなど日本独自の菓子パンや、具材を入れて焼くカレーパン、焼きそばパンなどの総菜パンが、日本の既存食文化と“共生”して定着した。
戦後、食糧難だった日本への援助の名の下にアメリカで過剰になっていた備蓄小麦とスキムミルクが日本に輸出され、小学校の給食となった。ところが日本のパン食は経済成長と共にアメリカの思惑を遥かに上回って独自に発達し、今や寿司や天ぷらと並ぶ日本を代表する食文化となってしまった。
極め付け?は「パンタク」の登場だ。3000年以上も前に日本列島に入ってきた米と同じように、パンは今や日本独自の食文化として昇華したようだ。

| 21.02.12

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