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パターン認識
今年日本で起きた企業の不祥事はいくつもあったが、その原因に日本人独特の「パターン認識の欠如による予知能力の欠落」という類似性があることに気づく。
その最たるものが、10月1日に東京証券取引所で発生した「終日取引中止」というシステム障害ではないだろうか。上海と世界第3位の規模を争っている証券取引所として実に恥ずかしい。
「バックアップが機能しないという想定外の事故だった」としているが、そもそも宮原社長が事故を予知?していたかも問わず、とにかく「切腹」(辞任)させることで事態収束を図るとは極めて日本的で見苦しい。
また「バックアップが機能しなかった場合の対応を、プログラムを開発した富士通は予知し考案できなかったのか」という疑問が湧く。
大規模ITサービスのバックアップシステムでは「想定外の事故は起こるもの」として、人智が及ばなければAIによる「パターン認識」と迅速な事後処理でダメージを最小化することが求められる。
東電福島原発の事故以来、「想定外だった」という言い逃れを許さず、あらゆる分野で「パターン認識」による予知対策が進んだと思われていたが、日本はまだまだなのか。
ところで「パターン認識」の有効性を示す興味深い事例が日本将棋界にある。藤井聡太棋士がなぜ強いのか?の分析である。
今年6月におこなわれた渡辺明棋聖との棋聖戦五番勝負第2局で、挑戦者藤井7段の58手目3一銀は、将棋ソフト(水匠2)に4億手読ませても別段有効な手とはされなかったが、6億手読ませると突如最善手として現れたというのだ。
羽生善治竜王は「彼は通常想定外とされる局面打開を、パターンで認識して解決する能力にすぐれている」と絶賛している。
今や人類の未来予知能力は、人の「パターン認識」力をAIがサポートすることによって進化すると言っても過言ではない。身近なところでは、西から東に天候が変化する天気予報がパターン認識の良い応用例だ。
ところがテレビの天気予報は沖縄や小笠原諸島をスペースの関係であろうか別表記している。これでは等圧線が切れてしまい「パターン認識」が機能しない。
人間の脳はパターン化されない単独データを繰り返しインプットされると予知能力が衰えて受け身になる。これは日本政府の曖昧なコロナ感染対応にも言えることだ。
8ヶ月で実は約8倍にまで増えているPCR検査件数の増加と対比しないで、コロナ感染者数だけを毎日発表するマスコミ。そしていたずらに危機感だけを煽る専門家には何か意図があるのだろうか?
自己防衛のためにも国民はパターン認識力を失ってはいけない。
| 20.12.25
ミライ
日本もついに、2030年代にはガソリン車の新車販売を停止するとのステートメントを世界に向けて発信した。これで主な自動車生産国の方向性が定まり、2030年代にはガソリンエンジンだけの新車発売はほぼ無くなることとなる。
次世代車として各メーカーから電気自動車の新型が続々と発表される中、トヨタは満を持して12月9日、水素燃料電池車(FCV)「MIRAI」の次世代モデルを発売した。FCVは電気自動車の更に先をいく「ゼロエミッションカー」として注目されており、排出物は何と水蒸気(H2O)だけだ。
注目されるのは、PM2.5レベルの細かい粒子に対応するダストフィルターは当然のこと、ケミカルフィルターで窒素炭化物や硫黄酸化物といった化学物質をも取り除くらしい。つまり走れば走るほど空気をきれいにする新概念「マイナスエミッションカー」というわけだ。
きれいにした空気量は、センターディスプレイ上で分かりやすく表示される(空気清浄メーター)とのこと。「マイナスエミッション」という概念の提案は、テスラにやられっぱなしにはしない!というトヨタの意気込みを感じさせる。
ところで電気自動車の世界を牽引しているテスラは、株式時価総額で60兆円を超えトヨタを倍以上上回ったが、2019年の年間生産台数はまだわずかに36万台だ。1000万台に迫るトヨタやVW、500万台のホンダや日産に比べると数十分の1以下という水準である。収益性でもようやく12か月連続で黒字を計上するところまできたばかりで、いわばよちよち歩きの状態だ。しかし自動車という巨大産業の未来を見せるという点で、世界的に優れたプレゼンテーションを成し遂げ、それが巨大な時価総額につながっている。
だが電気自動車の世界でテスラも安泰な訳ではない。そのテスラを上回る走行距離を実現するベンチャー「Lucid Motors」が登場し、米国ではテスラキラーと称される。こうしたシリコンバレー的電気自動車開発に対して、どのような新発想で優位性を見出していけるかが既存の自動車メーカーの最大の課題だ。
もともとテスラの15%の大株主でもあったトヨタは、数年前にその全株を潔く売却している。テスラと決別し自らの発想で世界の人々を幸せにするという道を選んだのだ。
トヨタは真のテスラキラーになれるだろうか?
戦後「いつかはクラウン」の標語で日本人の憧れだったクラウンを、トヨタは現モデル世代で終了するという。この噂に信憑性があると感じるのは、新型ミライが横から見ると現行クラウンにそっくり、しかも車体構造の基本であるシャシーのホイールベースが2920mmと、クラウンと全く同じなのである。
たぶん偶然ではないだろう。
| 20.12.18
神在月
旧暦10月(今年は11月15日から12月14日)は一般に「神無(かんな)月」と呼ばれるが、出雲(島根県東部)地方では逆に「神在(かみあり)月」と呼んでいる。
「神在月」には全国から八百万の神々が出雲の国に集まるのだそうだ。出雲以外では神様が不在になるため、全国的には「神無月」となったらしい。そして今年11月24日から12月1日(旧暦10月10日から17日)の一週間、出雲大社では「神迎祭(かみむかえさい)」に始まり、神々が酒造りや縁結びについて議りごとをする「神在祭」、そして神々をお見送りする「神等去出祭(からさでさい)」まで、古式に則り様々な神事が厳かに執り行われた。
しかし出雲に集まるのは地上に住む大国主命(おおくにぬしのみこと)に代表される国津神(くにつかみ)だけで、高天原(たかまがはら)に住む伊勢神宮の御祭神、天照大御神などの天津神(あまつかみ)は集まらない、と微妙な関係だ。
今世紀に入って、出雲大社境内から直径約1.35mの巨木3本を組んだ巨大柱が発見された。1248年(鎌倉時代)に改修された神殿の支柱に当たるものだという。出雲大社の本殿が鎌倉時代には推定48メートル(15階建て相当)の高さを誇り、慶長14年(1609年)まで日本一の巨大神殿だったことはあまり知られていない。
出雲大社には古代の巨大な本殿の設計図とされる「金輪御造営差図(かなわごぞうえいさしず)」が伝わっている。発見された支柱はそこに描かれた柱と酷似しており、出雲大社が現在とは別物の天空に聳える巨大神殿だったことを示唆している。
となると出雲大社はなぜ今の姿となったのだろうか?答えは隣接する荒神谷遺跡と加茂岩倉遺跡にあるようだ。両遺跡からは大量の銅剣と銅鐸が発見されているが、島根県立古代出雲歴史博物館は敢えてその理由を結論づけていない。
そこで大胆に推理してみる。青銅器しか持たなかった出雲大社を祀る古代王朝は鉄器で武装した伊勢神宮を祀る大和王朝に滅ぼされ、その結果出雲王朝の青銅器は刀狩りにあってそこに埋められたのではないだろうか。
ここに来て新型コロナウイルス感染拡大の深刻な地域をGo To トラベルキャンペーンから除外する動きが加速する中、「神在祭」と偶然一致した島根県の観光客は増加。あたかも八百万の神が全国から観光客を連れてきたようだ。
更に言うならば、コロナ感染第三波の中にあって島根県と隣の鳥取県は未だに感染者も少なく、死亡者に至ってはゼロである。
専門家が「神のみぞ知る」とつぶやいた新型コロナの感染状況だが、まるで国津神が集まった「神在祭」が神効果を出雲にもたらしたかのようだ。
| 20.12.11
いぶりがっこラーメン
秋田の名物たくあん「いぶりがっこ」はすごい漬物だ。クリームチーズとの相性も抜群だが、インスタント麺といぶりがっこパウダーにお湯を注ぎ、4分後にしょうゆスープを混ぜてメンマの代わりにいぶりがっこをトッピングする「いぶりがっこラーメン」がまた凄い。
単価500円で今年8月から発売されるやいなや、カップ麺としては高めの料金設定にもかかわらずなかなか手に入らないほどの人気である。
こうした“ご当地カップラーメン”は、その土地ならではの美味しさが詰まっている。最近はちぢれ麺と濃厚なスープが魅力の「マルちゃん 青森味噌カレーミルクラーメン」(東洋水産)、ガツンとした辛さがクセになる「凄麺 仙台辛味噌ラーメン」(ニュータッチ)、パンチの効いた醤油味が美味しい「富山ブラック」(寿がきや)などが有名だ。どれも思った以上に本物志向でレベルが高い。
現地で食べる「ご当地ラーメン」も魅力だが、このコロナ禍に移動せずともお湯を注ぐだけで地元の味が楽しめるとあって、正に的を射た商品ラッシュである。「ご当地カップラーメン」は今や多くの日本人にとって(GoToと並ぶ?)“神的”存在になりつつある。
この人気に一役買ったのは、テレビ朝日『ザワつく!金曜日』の「ご当地カップ麺No.1決定戦」だ。スタッフが用意した5つのカップ麺を出演者の長嶋一茂、高嶋ちさ子、石原良純が実食して、独断と偏見でランク付けするという企画だ。
過去2回放送されているが、取り上げられた“ご当地カップラーメン”は放送中からネットショッピングで争奪戦が始まりあっと言う間に品切れ、買えない状態が続くらしい。行きたくても行けない状況に、人々の欲求充足熱がここでも高まっていたのだ。日本の1億2000万人の創作力と購買力はまだまだ底力がありそうだ。
1年前までインバウンド観光と盛んに言われていたが、2018年12月に20カ国・地域で実施された「ジャパンブランド調査2019」によると、「日本には独自の文化を持つ地方が存在すると思う」と答えた外国人は全体の78.7%に上ったそうだ。
さらに「日本の地方に行ってみたいと思うか」の問いに対しては、何と83.4%もが行ってみたいと答えたそうだ。日本の多様性に富む自由度の高い地方文化を日本人は意外に認識していないが、外国人の評価は高い。
コロナ禍の今、インバウンド観光客が日本に来られないうちに、日本人は灯台下暗しで見過ごしていた地方文化を再評価し、感染防止に細心の注意を払いながら大いに満喫すべきだろう。
| 20.12.04