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なんちゃって5G

11月13日に待ちに待った「iPhone12 Pro Max」が発売され、第5世代(5G)移動体通信サービス対応機種が市場に各社ほぼ出揃った。これでいよいよスマホも5G時代突入かと思いきや、思わぬ落とし穴がありそうだ。
キャリア各社は整備を予定している5Gサービスエリアを公開しているが、それらを見る限り現時点では“点”でしかなく、“面”に拡大されるエリアは殆どない。 今後最低1年間は「なんちゃって5G」状態が続くようだ。
2時間の映画のダウンロードが4Gで5分、5Gでは僅か3秒だと聞いても、そのためにわざわざサービスエリアを探す人はいない。
IT先進国のお隣韓国では、2019年4月初めに世界に先がけてサムスンが5G対応新型スマートフォン「ギャラクシーS10.5G」を発売した、と同時に商用5Gサービスを開始している。米国も韓国に遅れること1週間、4月11日にはベライゾンが2都市でサービスインしたが、両国ともエリア拡大は困難を極めているようだ。
韓国はなりふり構わず「世界初」に拘ったが、サービス開始から1年半経ってもサービスエリアは限定的で、痺れを切らしたユーザーは安いLTEに回帰していると聞く。
世界各国が続々5Gの商用化をスタートさせている中、日本もやっと今年3月から5Gの商用化が始まり、対応スマートフォンが各社から相次いで発売されている。しかし韓国同様「なんちゃって5G」状態であることに変わりはない。
通信インフラの5G、6Gへの流れは不可逆だが、そのサービスを必要とする自動運転や遠隔医療、バーチャルトラベルといった各種AI産業はまだまだ追いついてこない。何よりも政府の「規制緩和」が先行しなければ普及もない。高速道路が出来ても速度制限が従来と同じでは意味がない。
そもそも莫大な設備投資が必要な5G回線を、3社別々に敷設する必要があるのかが疑問だ。高速道路を自動車メーカー別に作るようなもので、どうせ減価償却で税金を払わないのだから各社にやらせておくという政策では、永遠に携帯料金は下がらないだろう。
昔の鉄道建設公団方式とは言わないが政府主導でインフラを整備し、重複投資を避けるぐらいのリーダーシップが必要ではないか。敵は国内ではなく世界の高速通信インフラとその上を走るAI企業で、米国のGAFAMや中国のBATHといった超巨大グローバル企業に果実を持っていかれているのが現状だ。
たった30年の間に日本企業はグローバル産業に庇を貸して母家を取られてしまった。
航空機も作れず、原発も動かせず、再生エネルギーの供給もできず、時代遅れのリニアモーターに10兆円もかけて水争い?をしている場合ではないと思う。

| 20.11.13

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