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フリガナ

9月17日の自民党麻生派の派閥会合で、麻生太郎副総理・財務相は約7年8カ月続いた安倍前政権の政策継承の必要性を訴え、「菅(すが)内閣」というべきところを「菅(かん)内閣」で引き続き役割を果たしていかなければならないと二度も述べて物議をかもした。
実際に民主党政権時代に「菅(かん)内閣」が存在しているだけに、自民党政権副総理の発言としては重大なミスだ。百歩譲って擁護するなら、「同じ漢字苗字の読み方が全く違うことがある」日本語の特殊性がそうさせたと言えるだろう。
麻生大臣は首相在任時の2008年にも、国会答弁で漢字を読み間違え野党からの批判を受けた前科?がある。それ以来答弁書には「フリガナ」がふられているらしい。ここに日本の行政のデジタル化を遅らせる最大の要因が潜んでいるように思える。
世界で「フリガナ」が必要な表記を今も使っている国は日本だけではないだろうか。海外から帰国時の関税申告書には漢字名に「フリガナ」を併記しなければならない。各国向けに用意された申告書と比べて、氏名を二通りに書くのは日本語版だけだ。
一方金融機関や医療機関はその印字表記を諦め、診察券、キャッシュカードへの漢字名表記はなくなりつつある。コンビニのスタッフの名札も30%はすでに漢字を使わない等、漢字の扱い方について実務は現実に即してきている。
ところで気になるマイナンバーカードは、希望者には「旧氏」や「ローマ字氏名の併記」、「生年月日の西暦表記」も可能にするよう進められているらしい。だが「加藤」はヘボン式では「Katou」だが「Kato」や「Katoo」もあり、好きな音表記を許すと表現に揺らぎが出てしまう。これはデジタル化の流れに逆行し事態の混乱に拍車をかけるだけだ。
日本はただでさえ名字(苗字)が約29万種と世界で最も多い国の一つだそうだ。漢字発祥の国中国ですら3000種を大きくは超えず、北宋時代の姓の経典「百家姓」にきちんと整理されている。そう考えると日本の名字の多様性は異様だ。
正確に読むことが至難の名字であろうと切り捨てずに「文化的要素」を重視する姿勢を守ってきたことは、良い意味で「フリガナ」文化を育んできたといえるが、同時に行政のデジタル化を困難にした最大の要因でもあろう。
この国のデジタル化を推進するとしたら、最初の仕事は「フリガナ」をつけなくてもよい方法での名前表記を公式なものとすることだろう。
せめて副総理が恥をかかないレベルに単純化しないといけない。

| 20.10.09

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