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東京直結鉄道

2020年7月5日(日)の東京都知事選挙は現職の小池百合子候補が再選を果たし、辞任?しない限り引き続き4年間にわたって都政を担うこととなった。
都知事が果たしていない1期目の公約「7つのゼロ」は、ウイズコロナのニューノーマルが追い風になり大半が解決しそうだ。頭が痛いのは時間がかかるインフラ系の公約だろう。豊洲再開発に伴う地下鉄8号線の延伸「東京直結鉄道」や、首都直下型地震に備えた「都道無電柱化」だ。
地下鉄8号線の延伸は江東区の悲願だ。小池都知事就任前から実現に向けて各所に働きかけてきた。有楽町線を豊洲駅から分岐して、東西線の東陽町駅から半蔵門線の住吉駅までを延伸する計画だ。
2000年以降の都心回帰や、築地市場移転などの再開発要因も相まって、豊洲駅一帯は著しく人口が増加した。しかし豊洲~住吉間の江東区内だけでも総事業費1500億円以上と言われ、決して軽くない。
新型コロナウイルスの感染拡大が続いた時期にもかかわらず、5月1日時点の東京都全体の人口推計は初めて1400万人を突破。一極集中が続く東京だが、アフターコロナのリモートワークの普及などを想定すると「東京直結鉄道」の利用者数増加は見込めそうにない。
現在、世界的に見ても東京ほど電車が便利な都市はないだろう。東京の鉄道網は(江東区は不満だろうが)既に移動手段として完成している。世界では便利さを通り越して “迷宮”だと言われるほどである。セキュリティが弱い上に、外人や初めての利用者にとっては分かりにくいカオスなのだ。
朝日新聞が行った「便利すぎる?社会の行方」と題するアンケートによると、「いま以上に便利さを享受するのと引き換えに、あなた自身が失うものはあると思うか?」の問いに90%の人が「ある」と答えている。
明治維新以降「西洋的便利さと快適」を求めてガムシャラに働いてきた日本人に冷水を浴びせたのは、他でもない今回のコロナウイルスだ。「便利」さよりも「安全」と「生活の質」の向上を都民は意識し始めている。
ウイズコロナ時代の江東区、そして東京都の「安全と生活の質」とは何か?ゼロメートル地帯の災害救助体制がない限り江東区の将来はないし、首都直下型地震がかなりの確率で迫っている現在、8号線の延伸にかけるお金があったら電柱の地中化がより重要だろう。しかも景観が美しくなる。
ウイズコロナと5G時代の到来は人間の移動と集合を最小限にする社会を示唆し、「東京直結鉄道」や「リニア新幹線」は完成前に時代遅れになってしまったと言えよう。

| 20.07.17

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