trendseye

感染症リスク

中国武漢で新型コロナウイルスによるものと思われる肺炎が流行の兆しを見せ、春節を前に中国政府はもとより世界各国の衛生機関は警戒を強めている。
武漢は中国のほぼ中央に位置し、中国の航空路と新幹線はここを起点に全国に広がっている。世界最大の交通ハブ都市でもある。
タイのバンコクでも肺炎を発症した中国人旅行者から同型ウイルスが検出され、武漢からの観光客だったことで注目が集まった。
中国の一帯一路政策は、ユーラシア大陸だけでなくアジア・アフリカ全土へ中国人労働者を送り込んでいる。そのため新種の感染症を交通ハブ武漢から出さずに撲滅することに、中国政府は全力で臨む構えだ。
今年4,000万人のインバウンド観光客を想定する日本国政府に、感染症に対する同様の覚悟はあるのだろうか?昨年の豚コレラ(CFS)への対応を見る限りその覚悟は怪しい。
昨年、日本政府は豚コレラの発症を遂に認めてワクチンの使用を決定したが、渋々だった。類似事例が複数起こっていたにも拘らず、ワクチン使用によりOIE(国際獣疫事務局)から豚コレラ「清浄国」の認定が取り消され風評被害を含め輸出等に差し支えが出る、という論理らしい。本末転倒である。
第二次世界大戦以降、世界中に派遣されたアメリカの兵士、湾岸戦争特にイラクからの帰還兵の中に、謎のバクテリアで肺炎を発症する感染症が見つかっている。このバクテリアは全世界の米軍基地の院内感染によって広まり、退役軍人を中心に今も後遺症に悩む人は多い。
アメリカでは感染症対策は自己責任で行うものであるという意識が強い。医療専門のホームページが『病院に行くと、他人に感染させたり他の病気に感染するリスクが高いから、家で寝ていなさい』とアドバイスするほどだ。
日本では学校や会社から半ば強制的に病院に行くように言われるが、感染症対策としてはリスキーで時代遅れだ。
これまで日本の製薬メーカーのワクチンは保険適用されず、しかも国内販売に限られていた。アイルランドのShire社を買収した武田製薬はその販売網を使い、遂に日本初のワクチンの世界規模での販売を可能にした。
予防医学の観点からも画期的な判断だ。日本には、感染症を他国へ絶対に出さない、仮に発症しても世界にワクチンを供給する、という確固たる意志が今までなかった。
2020年、GAFAのヘルスケア関連の投資が相次いで発表される。日本の人口は減っても、世界人口75億人時代の感染症対策産業は大いに振興するだろう。
感染症対策は、世界から人を集めるオリパラにおいても大きな注目点だ。日本は大丈夫か?

| 20.01.17

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE

ARCHIVES


1990年9月~2006年7月までの
TRENDS EYEの閲覧をご希望の方は
こちらへお問い合わせください。
ART BOX CORP.