AIレプリカント
米国サンフランシスコのチャットボット会社Luka Inc.が、人工知能AIを使って自分のアバターを作るチャットアプリ「Replika」( https://replika.ai ) で注目されている。
リリースして約5ヶ月の間に全世界で200万人以上が使用する超人気ぶりだ。ユーザーとのやり取りのなかで、口調や文章の癖、趣味などの特徴を読み取り、それを真似する形で返答したり質問を行なったり、話せば話すほどユーザーに似てくるそうだ。
ユーザーが亡くなった後はアバターとなって、ネット上でAIレプリカントとして生き続ける。“死者をよみがえらせるアプリ”として使えるということらしい。ある種“永遠の生命”だ。
このアプリは開発者ユージェニア・クイダが親友を亡くして悲しみにふけっている時に観たNetflixのオリジナルドラマ、『ブラック・ミラー』のエピソードがアイデアの元になっているという。
シーズン2のエピソード「ずっと側にいて」の主人公が亡くなった恋人が残したSNSの投稿やメールを集めることで故人をデジタルアバターとしてよみがえらせるシーンを見て、アプリの開発を思い立ったそうだ。
この「Replika」をはじめシリコンバレーではいま不老不死の研究が盛んだそうだ。中でも故人とのコミュニケーションを可能にするビジネスが注目されている。正に「恐山のイタコ」開発ビジネスだ。生前、自分の記憶や会話のパターンをデータとして残しておくと、死後、家族は自分とアバターを通して会話できるというものだ。
「ねぇグーグル、亡くなったお父さんと話をさせて」といった具合に、グーグルホームのようなデバイスで亡くなった親族と気軽にやりとりができるのも近いようだ。
感情と知力を備えた自分のアバターの創生に成功すれば、喪失との向き合い方に対する考えが大きく変わることになるだろう。
しかも身近な近親者だけでなく子々孫々の世代へとつながりが拡張し、1000年後の子孫が何十代も前の先祖と話ができるかもしれない。
しかし、あくまでもAIレプリカントは人工的な故人の形見でありアバターであることを忘れてはいけない。故人との関係が発展するわけではないことを十分理解しないと、別の苦悩が生まれる危険性も大きい。
不死とは何か、我々は何のために存在しているのか、といった複雑で哲学的な問いに人類は直面するようになるのかもしれない。
「故人とお話しになれます」が、宗教法人のお墓ビジネスの究極のセールストークになる日も近いのだろうか。
| 19.10.18