サステイナブルファッション
今、ファッション業界を支配しているのは「ファストファッション」だ。低価格で品揃えを目まぐるしく変えることで、消費者に衣服の頻繁な買い替えと廃棄を促している。
事実、衣料品の生産量は2000年から5年間で2倍に増えており、マッキンゼー・アンド・カンパニーの2019年「The State of Fashion Report」によると、平均的な人が買う衣料品の点数が15年前よりも60%増える一方で使用期間は半減したそうだ。
プラスティック廃棄物の海洋汚染が問題となる今、ファッション業界が第2位の汚染源となっていることは意外に知られていない。
ファッション業界は毎年約930億立方メートル、500万人分の需要に匹敵する水を使用し、年間12億トンの温室効果ガスを排出。国際自然保護連合(ICUN)によると、海洋投棄されるマイクロプラスチックの35%は合成繊維製造過程での洗浄によるものだという。結果、30年後には地球上の二酸化炭素累積排出量の4分の1以上をファッション業界を含む繊維産業が占めると予測されている。
ステラ・マッカートニーは、環境汚染問題に鈍感なファッション業界に一石を投じるデザイナーだ。今年5月に開催された「コペンハーゲン・ファッション・サミット」で、グーグルと組んで“素材のサステイナビリティを「見える化」する”と発表した。
(https://www.standard.co.uk/tech/stella-mccartney-sustainability-fashion-google-cloud-a4143006.html)
もともと彼女は動物由来の素材やPVC(ポリ塩化ビニル)は一切使わず、代わりに再生カシミヤや再生ナイロン、人工スパイダーシルクといった環境にやさしい新素材を使ってきた。
今回のプロジェクトは、デザインや素材調達のときの判断材料として、温室効果ガスや汚染物質の排出量、水の使用量、土壌への影響といった指標を立て、どの素材を使うとどれくらいの環境負荷があるのかを分かり易く示し、それをファッション業界全体で利用できるようにするというものだ。
まずは大量に使われているコットンとヴィスコースを対象に、商品が消費者の手に渡るまでの過程について、ステラ・マッカートニーが独自のサプライチェーンから集めた数年分のデータをグーグルのアルゴリズムを使って集約し、公開するという。
アディダスも今季、完全にリサイクルが可能なランニングシューズ「FUTURECRAFT.LOOP」を開発して話題になっている。今後、リサイクルやシェア可能なアイテムの開発など、何かしらの策を打とうとするブランドは増えてくることだろう。
米中貿易戦争もただ制裁関税を掛けあうだけでなく、「どうやってその製品を作ったか?」と環境負荷を算出して関税を決めるぐらいのインテリジェンスがほしいものだ。
| 19.06.14