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天皇の英断
天皇の意志で生前譲位を実現し、天皇自らの手で新しい時代「令和」を切り開いたのは実に明るい話題だ。
日本には遠く大化の改新( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%8C%96%E3%81%AE%E6%94%B9%E6%96%B0 )以来、国のシステムを大胆に変えるイノベーションを以って発展の礎としてきた歴史がある。何もなかった武蔵の国に江戸幕府を置いて新時代を開いた江戸時代。鎖国を解いて開国を以って新時代を築いた明治時代。あらゆる技術を国産化することで、輸入国からモノづくり輸出国に産業の根幹を変えた昭和時代。
しかし平成時代は現状維持に四苦八苦し、国家繁栄の方程式を失ってきた。
主要産業である自動車産業は今や海外生産が主流で、新車開発も海外拠点で行われる始末。IT産業もかつては日本でも何社か検索エンジン等を作っていたが、今ではGoogleとYahoo。メールサービスも通信5Gの世界も、気が付いたら全部海外のサービスになりつつある。TwitterやFacebookなどSNSも然り、そのうちほとんどのサービス分野でGAFAが出資する海外ブランドを使うようになるだろう。
日本が新規に何かを作るより海外のものを使った方が便利、という時代になってしまったのは、イノベーションを以って産業勃興を進めなかった結果だ。
日本の情報発信力、経済力は低下し、少子化時代を乗り切る新しい産業イノベーションが興されないため、国民は更に働き続けなければ国家を維持できなくなっている。国自体がブラック国家になっているのだ。
少子化を前提にした産業構造を手に入れている国は少なからず存在し、それらの国では人口が少ないことが産業の効率化と富の再配分に有利に働いている。
平成歴代の首相は自らの施策の効果?を誇示するばかりで、そのためには遂に国家統計までいじるという醜態をさらした。
平成の後半は「復興」の大義名分のもと旧態依然としたインフラ建設の投資に終始し、金をばら撒き続けた。その結果、国家財政は1000兆円にも上る国民への借金を積み上げ、余った金は大型企業の内部留保として蓄積されただけだった。企業自体が老後に怯えて貯金する高齢者と同じ行動を取っているような国に未来はない。
一方、戦後アメリカの対日占領戦略で皇族を減らしたため、天皇家の未来永劫の繁栄にも翳りが見られる。その先には日本が敗戦100年を経ずして、いよいよアメリカの軍門に降り、その忠実なる新植民地になっていく姿も最近見え隠れしている。
天皇自ら皇統が絶えるかもしれないリスクを冒し、その長い歴史になかった大英断を下して国を変えていく模範を示されたのだ。
イノベーティブな新産業構造を示さないまま、我々が「令和」を迎えてはいけないだろう。
| 19.04.26
コナ直行便
2017年秋、長らく中断していたJALのハワイ島コナへの直行便が7年ぶりに再開された。これに先立って2016年の暮れにはハワイアン航空もコナ直行便を再開している。
ハワイ島のコハラコーストは、米国西海岸からプライベートジェットでやってくるウルトラハイエンド層が多く集まる有名なリゾート地なのに、日本からの両フライトにはファーストクラスの設定がない。
この矛盾する現象の裏に、日本のハイエンド層の世界における位置づけが読み取れる。日本でインバウンド観光客が3000万人を超えたと話題になる中、日本の富裕層は世界のリゾートマーケットで、せいぜいビジネスクラスで満足する層だということのようだ。
この事象は、日本の2大鉄道系ディベロッパーが開発したハワイ島での大規模リゾートが、最近時を同じくして人知れずアメリカ資本に売却されていたこととも関連している。
東急グループの「マウナラニ・ベイ・ホテル&バンガローズ」と「フランシス・H・アイ・ブラウン・ゴルフコース」、およびそれに隣接する高級レジデンスのマネージメントは、2017年にカリフォルニアに拠点を置く不動産会社Prospect Hill Group (http://prospecthillgroup.com/ ) に売却された。
西武グループは、60年代にロックフェラー家が開発した有名なマウナケア・リゾートを時の勢いに任せ1990年に買収、1994年には隣接地に「ハプナビーチプリンスホテル」を開発して共にプリンスホテルのフラグシップと位置づけてきた。
しかし堤家の凋落から、2017年にその一部をアメリカの不動産投資会社Angelo Gordon & Co. に売却し、「ザ・ウェスティン・ハプナビーチリゾート」として再スタート、プリンスホテルの名を捨てている。
東急、西武ともにオーナー健在の時にはハワイの王族やロックフェラーと同様にハイエンド市場をターゲットにした開発を行ってきたが、バブル崩壊の後に会社がサラリーマン化する過程で継続開発を諦めたのだ。
2020年の東京オリンピックでは、首都圏にビジネスジェット専用空港がないため選手が乗ってくるプライベートジェットのハンドリングが心配されている。ビジネスジェットでしか移動したことのないウルトラハイエンド層が世界で増殖していることを日本は察知しなければならない。
ウルトラハイエンド対応がないと、オリンピックのみならずIRや国内リゾート開発すら中国やアジアのディベロッパーの後塵を拝してしまうのだ。
北海道ニセコに於ける東急や西武の開発が、正にこれからという時に香港資本とマレーシア資本に買収された現実を肝に命じなければいけないだろう。
| 19.04.19
電子書籍消滅!
米マイクロソフトは4月2日、突如Microsoft Storeでの電子書籍の販売を中止し電子書籍事業を閉鎖すると発表した。
このサービス停止によって、Microsoft Storeで過去購入した電子書籍はすべて読めなくなってしまうらしい。これまでの電子書籍代金は全額返金するとしているが、当然のことながら金を返せば良いというものではないと波紋を呼んでいる。
明らかになったのは、ユーザーが過去購入したのは書籍データではなく、要するに書籍閲覧サービスへの「アクセス権」であったということだ。
改めてAmazonのKindleの利用規約を確認してみると、これも購入していたのはやはり「アクセス権」であり、いつでも取り上げられる可能性があると定められている。( https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201014950 )
日本国内で電子書籍サービスが雨後の筍のように登場したのはわずか10年ほど前で、その多くが同様に既に消えている。全国出版協会によると、2018年の紙出版市場規模が前年比5.7%減の1兆2,921億円で14年連続のマイナスなのに対し、電子出版市場規模は11.9%増だが、いまだ2,479億円と振るわない。音楽やゲーム配信に比べ伸びが遅いのだ。
電子出版市場の内訳は電子コミックが14.8%増の1,965億円で、電子書籍の321億円、電子雑誌の193億円を圧倒している。現状、日本の電子出版市場を牽引しているのは電子コミックだと言える。
ノルウェー・スタヴァンゲル大学の研究報告によると、同じ書籍を従来の紙で読んだ人に比べて電子書籍で読んだ人の方が内容を覚えていないことが明らかになったそうだ。登場人物やストーリーなど基本的な部分の記憶は同等だが、より詳しい内容に入ると明らかに違いが出るとのこと。その理由として、紙の本の場合その重さや手触り、本の匂いなどが重なり脳への刺激が強いからだと報告されている。
コミックは音楽やゲームと並ぶ一種の時間消費的コンテンツであるが、書籍は読んだ後も身近な本棚に並び「インテリア雑貨」として歴史を刻んでいくというもう一つの役割もある。
電子書籍の登場でそのうち紙の本を見なくなる日がくるのでは?と言われたが、紙の本には文字情報以上に、「本」という“物理的な形態”が持つ情報量が多い。
今回のマイクロソフトの撤退でその不安定さが露呈した電子書籍だが、情報として色々な場面で検索したい場合はともかく、記憶に留め手元におきたい本は、まだ紙で購入する必要があるということらしい。
| 19.04.12
アドレスホッパー
「アドレスホッパー」という新しい暮らし方が、自由な仕事につく独身の若者達の間で話題になっている。
ひとつの住所という特定の拠点を持たずに国内外を移動しながら、Airbnbで見つけた部屋やシェアハウス、ホステル、ホテルなどで暮らし、オンライン環境のコワーキングスペースなどで仕事をする。“家”という概念に囚われずに、多拠点で生活をする新しいライフスタイルが日本に確実に生まれているようだ。
まず定住する家を持たないと、モノへの考え方が変わってくるそうだ。常時移動に備えて本当に大切なものしか持たず、家に費用をかけない分、大半の収入を移動費に充てる。毎日同じルートで通勤するという概念もなくなり、便利な場所でリモートワークすることが普通になる。仕事に対してもやらされている感がなくなり、精神的に解放されてクリエイティブな仕事が出来るように変わってくるという。
立川こしら著『その落語家、住所不定。 タンスはアマゾン、家のない生き方』(光文社新書) ( http://daipuro.com/book/ )には、「アドレスホッパー」たる生活が如何なるものかよく描かれている。
「アドレスホッパー」にとって、政府が進める地方創生は好環境だ。従来の移住者を求めるのではなく、定期的な滞在や仕事を通じて地域との縁を持つ人を増やそうとする自治体の制度は、彼らのライフスタイルに合致する。
秋田県大館市の「お試しサテライトオフィス」では往復の旅費やレンタカー代を市が半額補助し、1泊3000円の極安コテージにWi-Fiや家電製品、ビデオ通信機器などを完備し提供している。市内の温泉も100円で利用可能らしい。
さらに“不動産業界のアマゾン”と評される、インド発のホテル運営会社 OYO(オヨ)が上陸した。OYOはインドのほか、既にインドネシアや中国、イギリスなど世界8カ国で急成長。日本ではヤフーと共同で「OYO TECHNOLOGY & HOSPITALITY JAPAN (商標:OYO LIFE)」を設立して営業に入った。
敷金・礼金・仲介手数料は無料、3ヶ月単位の契約手続きはすべてスマホで完結する。不動産屋に出向くことはおろか、紙での書類のやり取りも一切なし。気軽な住み替え需要を掘り起こし、自分のライフスタイルに合わせて住居を転々とする「アドレスホッパー」にピッタリだ。
「アドレスホッパー」は、固定費の代表ともいえる家賃や住宅ローンを変動費にしてしまうというコペルニクス的価値転換を起こそうとしているのか。
「アドレスホッパー」の増殖は自由な住み方を提起するだけでなく、都心の昼間人口と夜間人口を均等に近づける。それがストレスフリーな日本の新しい生活様式として認知される日も近そうだ。
| 19.04.05