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エノキアン

フランスに「エノキアン協会」という、200年を超える老舗のみが加盟を許される団体があるが、昨年1月、その会長に初めて日本人が就任したことはあまり知られていない。名古屋の岡谷鋼機 ( https://www.okaya.co.jp/ ) の社長、岡谷篤一氏で、任期は2年となっている。
岡谷鋼機は鉄鋼、機械などを扱う独立系商社で、発祥は1669年(寛文9年)までさかのぼる。寛文9年といえば江戸幕府第4代将軍家綱の時代だ。
エノキアン協会はフランスの団体だが、各国の企業が加盟している。家族経営の概念を維持するオーナー企業が中心で、その成り立ちからヨーロッパのワイン、ガラス製品、宝石業などの企業が多い。
現在の加盟数は48社で、内訳はイタリア13社、フランス12社、日本9社、ドイツ4社、スイス3社、オランダ2社、ベルギー2社、イギリス1社、オーストリア1社、スペイン1社である。アジアからの加入は日本の9社だけ、旅館の「法師」をはじめ「虎屋」「ヤマサ醤油」「月桂冠」など、みな300年を超える“老舗”ばかりだ。
日本には寺社・城郭建設や文化財建造物の復元・修復を行う創業578年の金剛組(現・高松コンストラクショングループ)を筆頭に、200年以上にわたり事業を継続している“老舗”が3,000社以上あり、世界で5,586社しかない中で抜きん出ている。ちなみに第2位はドイツの約800社だ。
エルメスのフランス本社副社長を長年務めた齋藤峰明氏が、数年前、雑誌のインタビューで「ライバル会社は?」と聞かれて、「強いて挙げるならば虎屋だ」と真面目に答えたそうだ。エルメスの本質は、ルイ・ヴィトンのようにさまざまな会社を買収しながらコングロマリットを目指す姿勢ではない。500年続いた「虎屋」のような“老舗”たる姿勢にこそ目標はあるという意味だったようだ。
中国のあるメディアが、かつて創業100年を超える“老舗”企業がなぜ日本に数多く集中しているのかと疑問を投げかける記事を掲載。中国の儒学者孟子は、「徳のある家は10世代以上にわたって繁栄できるが、金持ちは3世代も続かない」と述べたとされるが、これはまさに核心を突いていると論説していた。
日本を訪れる中国人には日本の“老舗”の視察を目的に来る人も少なくない。急激に経済成長する中国だが、たとえ富裕層であっても「伝統」や「歴史」は一朝一夕には手に入らない。
日本で当たり前に長く続く老舗企業群は、中国から買収対象候補として虎視眈々と「視察」されていることを忘れてはならないだろう。

| 19.03.29

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