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トイレの日

去る11月19日は、国連が「世界トイレの日」と定めた日だったそうだ。
この日ユニセフは、世界人口の3人にひとりが清潔なトイレを使えない現実や、毎日1600人が下痢性疾患で命を落としている事実など、多くの子どもの命を奪う原因となる貧困とトイレの問題を発信し、世界に関心と行動を呼びかけた。
それに先立つ11月6日には、Microsoftの創業者ビル・ゲイツが中国・北京で開催された「トイレの未来に関する国際フォーラム」に出席し、人糞が入った容器を手に世界のトイレ事情についてのスピーチをして話題になった。(https://courrier.jp/news/archives/142998/ )
彼は北京で「トイレ再開発博」を開催。出展した企業は、尿の水分を他の排泄物から分離し手洗い用の水にリサイクルするなどの機能を持つトイレを展示した。
ビル・ゲイツ曰く、そうした不衛生な環境対策費は世界で年間2230億ドル(約25兆円)を超え、これは健康維持のための費用を上回り、世界の生産性は低下、賃金の損失も招くのだそうだ。
衛生問題だけではなく、先進国がトイレがもたらす問題とどう向き合うかは21世紀の人類の人生観や国家観に大きく影響するテーマとなっている。教育方針、企業の姿勢、ジェンダーや人権の問題も、全てトイレ問題に凝縮されるからだ。
かつてカラード用のトイレがあった米国では、ゲイ、レズビアン、トランスセクシュアル、バイセクシュアル問題を始め、多様な人類の権利をより広く認める動きが起き、これが「ジェンダー・ニュートラル」なトイレの開発と普及につながろうとしている。
トイレが性で分けられていることで、気付かないうちに様々な精神的・身体的苦痛を一部の人に与えている。自身の外見上の性別やアイデンティティを斟酌することなく、安心して使えるトイレを選べる「ニュートラル・トイレ」の必要性をより早く察知したのは大学だった。米国では多くの都市で教育施設に「ニュートラル・トイレ」が普及し始めている。
ところでこのトイレ問題、実は人類の未来をも映し出している?生じるのは「性別は本来必要なのか?」という大胆な疑問だ。人類の主人公は実はX染色体だけを持つ女性だ。生物学的にはX染色体の遺伝子交換のために、XY染色体を持つ個体(男性)が存在しているようなものだ。しかし遺伝子技術の発達で、Y染色体が必要だった時代が終わろうとしている。男性なしでも子孫を作れる時代が来たら人類はどうなっていくのだろうか?
「ニュートラル・トイレ」の普及は、正に人類の未来へのアポカリプス(黙示録)であるかのようだ。

| 18.12.07

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