海亀(ハイグイ)
中国では、「海亀(ハイグイ)」と呼ばれる海外を一度経験した高学歴のUターン組が増殖している。( http://j.people.com.cn/n3/2017/0412/c94475-9201957.html )
海亀(ハイグイ)」は深センだけでも約8万人以上いるそうだ。またアリババが本社を構える杭州では、2018年1月の時点で「海亀(ハイグイ)」族が創業した企業の数は4500社以上にのぼるといわれている。彼らは共通して、オフィスの外はすぐに世界(GAFAなどの海外有力企業)とつながっているという意識が強く、容易に世界のトップ企業とコンタクト可能なことを強みにしている。
中国では、「より良い教育」「大学入試のストレスからの解放」「海外での就職」「留学先の居住権/永住権取得」といった観点から海外留学が人気だ。2016年には留学者数54万5,000人と、過去最多を記録した。
しかし新しい傾向として、留学時には現地での就職や永住を希望していながらも、大学卒業後は中国に帰国する人が増加している。これがいわゆる「海亀(ハイグイ)」と呼ばれる人達だ。
中国のシンクタンク、センター・フォー・チャイナ・アンド・グローバリゼーション(CCG)によると、2016年に海外の大学を卒業した中国人留学生の80%までが中国に戻ってきているという。特に1980年から2000年の間に生まれた世代、2015年10月末に中国政府が一人っ子政策を廃止する前に生まれた子たちが、親のことを考え戻ってきている。
中国政府は、海外で学んだ才能ある自国民「海亀(ハイグイ)」を呼び戻すことでIT産業を中心に国をさらに盛り立てようという考えだ。日本政府は、必ずしも中国や韓国の留学生の数を追う必要はないのでは?
日本の海外留学者数は、経済協力開発機構(OECD)の統計によると、ピークであった2004年(8万2945人)から11年(5万7501人)までの7年間で3割減少している。しかし面白いのは、日本の留学生はほぼ全員が「海亀(ハイグイ)」だという点である。
日本は一般的に閉鎖的で、移民もほとんど受け入れず、独自マーケットを重視した企業を多く有する国と見られているが、和製「海亀(ハイグイ)」がそれを変えつつある。
アメリカが世界の舞台から撤退して自国の政治的分断に集中し、ヨーロッパでは右派ポピュリズムが台頭するなか、日本は独自の世界観に基づいた、高度に文明化された“エキゾチックな国”を作りつつある。
移民に頼らず、「海亀(ハイグイ)」によって国を良識ある世界のリーダーにして行く道も日本の選択肢なのだろう。
| 18.11.09