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浚渫(しゅんせつ)

西日本豪雨発生から1ヵ月余り、200人以上が亡くなるという悲惨な災害となった。広島、愛媛、岡山の3県では多数の安否不明者を出し、猛暑と台風の中いまだ3,000人以上が避難生活を強いられているという。依然として事態の全容は解明されていないが、「人災」であるという声が高まっている。
ダム内に土砂が堆積して貯水量が減ることを防ぎ、本来の治水機能を保つ「浚渫」はダム設計時に機能設計されているが、設計通り行われていないダムが全国で100カ所以上あることが、2014年の会計検査院の調査( http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/26/pdf/261021_zenbun_03.pdf )で分かっている。このままでは多発している突発的な局地的豪雨などに対応できないとして、検査院が国土交通相に即時改善を求めていた中でこの水害は起こった。
当時検査院が検査したのは、国交省が管理する29ダムと21道府県が管理する182ダムの合計211ダムなので、なんと半数以上が問題ありとされていたのだ。ポイントは点検や計測の実施状況、堆砂への対応、緊急時への備えなどで、中でも指摘が最も多かったのは堆砂への対応状況。計画年数に達していないのに既に堆砂量が計画堆砂量を上回っている事例が、9府県管理の20ダムに見られたそうだ。
また堆砂量が計画堆砂量に達していなくても、土砂が洪水調節容量内に入り込んで本来貯留できる水量を保てなくなり、下流の河川に影響を及ぼす恐れのあるダムもあると勧告されている。国交省所管の14ダムと16道県所管の92ダムがこうした状態で、さらに11道県所管の48ダムは、洪水調節容量内の堆砂量を算出していないなど、そもそも「浚渫」以前の低レベルな問題も露顕していたようだ。
必要なダムであっても、単に作っただけで適切な使い方や溜まった土石を毎年「浚渫」する予算組みとメンテナンスを怠ってしまうと無用の長物と化すことは自明の理である。
米国ではハリケーン・サンディの襲来後、アメリカ合衆国住宅都市開発省 (HUD) とロックフェラー財団は、自然災害を想定した復興設計コンペである 「Rebuild by Design」を立ち上げた。「Rebuild by Design」のチャレンジは、サンフランシスコ・ベイエリアをモデルとして、周辺の10のロケーションで地域住民と官公庁担当者、専門家を立ち合わせて、海面上昇や暴風雨、洪水、地震に対して、環境保全型でよりよい復興を提案する 10 組のデザイン チームを選出した。災害が起こる前に復興プランを設定しようというものだ。
日本でもダム管理を国交省や自治体の役人に任せるだけでなく、幅広く復興設計コンペをするなどして問題を可視化する必要があるのではないか?
気象庁に「異常気象宣言」をさせて、人災の責任回避をさせてはいけない。

| 18.08.17

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