ASMR
物を噛む時の咀嚼音は、音フェチの人にはたまらない快感、心地よい感覚を指す「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)」と呼ばれるジャンルに分類される音だそうだ。「焚き火の音」や「氷を食べる音」、「ハサミをひたすらチョキチョキする音」も「ASMR」だ。
シンガーソングライター・黒木渚さんがフジテレビの番組「アウト×デラックス」で、「咀嚼(そしゃく)音フェチ」であることを明かした。動画サイトで「咀嚼音」を聞くのが習慣だという。中でもお気に入りは就寝前に聞く「フライドチキンを食べる音」で、カリっとした食感と肉のジューシーさが伝わってくるのがたまらないそうだ。「大きな頭蓋骨の中に入っているみたいな気持ちなんです」「官能的に聞こえる時があるんですよ」と魅力を語った。
実際YouTubeで「ASMR」(https://www.youtube.com/results?search_query=ASMR )を検索すると、海外を中心に多数の動画がヒットする。「ASMR」専用のチャンネルもあり、100万人超の登録者数を誇る配信者もいるとのこと。
「ASMR」を直訳すると「自律感覚絶頂反応」だが、聴覚から自律神経が刺激され、聞く人によっては脳がとろけそうに気持ち良くなる、いわゆる「音フェチ」「耳フェチ」の世界だ。
ただこうした「ASMR」の効果が本当にあるのかどうか、科学では証明されていない。特定の認知的な刺激に対し起こる不随意反応(無意識の反応)であると推測される。刺激によって脳内の電気活動にある種の発作が生じて“快感”になるらしい。
80%以上の情報が視覚からもたらされると言われる中、「聴覚優位」に快感や安心感を得る。ASMR動画の聴視者の中には不眠症やPTSDなど心的な問題を抱える人も多く、彼らは自分に合った薬を探すように自分に合った音を探し、その音を睡眠誘導剤代わりにしているのだ。
大手企業はすでに「ASMR」を使った広告を展開、北欧家具販売のIKEAは自社で卸している家具の心地よさを伝えるために、ベッドシーツを撫で触った際に発生する音を25分間流す動画広告を配信している。音を通して快感を求める時代になってきていると言えよう。
そもそもYouTubeはアップロードするとき音源が圧縮されるため高音域が聞こえづらい。「ASMR」は音の世界の可能性と深みを広げてくれるかもしれない。
中国政府は人の感覚に働きかける、そんなよく分らない現象を許容できなかったようで、6月8日に国家ポルノ・違法出版物対策局が中国の全ての主要な動画サービスに「ASMR」ビデオの削除を命じたそうだ。
| 18.07.13