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マサル

ロシアのプーチン大統領が“秋田犬”の大ファンなのはよく知られている。2012年に日本から贈られた秋田犬も、2014年に安倍首相がソチの大統領公邸を訪ねた際、大事に育てられプーチンになついている姿が報道された。名前は日本語で「ゆめ」、大統領自身が名付けたそうだ。
今回ピョンチャン五輪で女子フィギュアスケート金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワ選手にも日本から秋田犬が贈呈されることが決まり、再度“秋田犬”とロシアが注目を集めている。贈呈されるのはメスらしいが ザギトワが「マサル」と命名、「勝利」という意味からだという。
ところで「ゆめ」の父親の名は「好古(よしふる)」(http://www.sankei.com/smp/premium/news/161231/prm1612310033-s2.html)。日露戦争で日本の騎兵の父と言われた明治の陸軍大将秋山好古からとった名前、ロシアにとっては宿敵の大将の名だ。
KGB出身のプーチン大統領だが、そんなことは先刻承知の上で「ゆめ」を可愛がっているのだろう。「好古」の子を今度は自分が支配する快感?これも秋田犬が取り持つ日本とロシアの縁なのだろうか。
秋田犬はマタギ犬をベースに大型化され、様々な変貌の後、犬種として確定されて100年ほどしかたっていない。だが、秋田犬保存会の年間登録数(国内)は、ピーク時だった1972年の約4万6000頭から最近では2000頭台まで減少し、本場の大館市でさえ飼育されているのは30頭に満たないほどだそうだ。
国内で姿を消しつつある一方、海外での年間出産頭数はイタリア一国で日本を上回るほど。中国では富裕層を中心に、日本では考えられないほど高額で売買される人気犬種となっているらしい。
今世紀に入り、人だけでなく犬のゲノム解析研究も飛躍的に進み、秋田犬は最もオオカミに近い遺伝子を持つことが分かっている。
日本に朝貢していた渤海国(698年 - 926年)は、かつて満洲から朝鮮半島北部、現ロシアの沿海地方にかけて存在した国家だが、そこでは主に蒙古犬が飼われていたと言う。当然、日本海側の東北地方にも渡って来ていたはずだ。
正倉院の宝物は、天平年間765年光明皇太后の時代には既にペルシャとの交易があったことを示しているが、秋田犬のゲノムも、天皇家が日本に渡って来た6-7世紀に、コーカサスからエフタル、モンゴル、渤海と多くの混血を経ながら日本へ来たことを示している。
今年は戌年。それにしても海外の“秋田犬”人気を、日本人はあまりにも知らない。海外での登録はここ10年間で8倍以上にも増えたそうだ。
日本の価値を一番知らないのは日本人かも知れない。

| 18.03.09

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