マジ卍
最近SNSなどで、「マジ卍」という言葉をよく見かける。日本で「卍」といえば神社仏閣を意味する地図記号として知られている。
しかし、最近の若者たちの間では「マジ?」、「本気?」から、「調子に乗っている」、「ヤンキー」、そしてテンションが上がった時や写真を撮る時など、雰囲気によって意味が変化する記号のように使われている。
たまたま「マジ」という言葉と「卍(まんじ)」の響きがよく似ており、ビジュアル的にもカッコいい珍しい文字であったことから、若者達の間で流行ったようだ。
実は「卍」はインドの新石器時代の遺跡から発見された紋様だが、その後ヒンドゥ教や仏教の影響が強い国を中心に世界各地で使われている。日本へは中国、朝鮮を経て仏教伝来と共に伝えられた。日本の仏閣では瑞兆のシンボルとして「卍」の紋様が取り入れられて来た。また中国の仏典において単位の「万」の代わりに使用されたことから、中国で「わん」日本では「まん」と発音されている。
ところが「卍」の記号がナチスのハーケンクロイツの裏返しであることから、一時、2020年東京五輪開催に向けて寺の記号を「三重の塔」に置き換える案が、国土交通省・国土地理院で出たそうだ。外国人が理解しやすいようにとの配慮もあったようだが、最終的に「卍」は大切な歴史遺産として残されることとなった。
一方、日教組の部会に「高大連携歴史教育研究会」という機関があるが、「歴史の教科書に載る暗記しなければならない用語が多くなりすぎて、歴史を学ぶ楽しさをスポイルしている」という理由で、現在3,500語ぐらいある歴史用語から人名を中心に1,500語ぐらいを削除するべきだと文科省に提案しているらしい。
減らされそうな言葉は主に歴史上の人物名で、日本史においては坂本龍馬、武田信玄、上杉謙信、吉田松陰、大岡越前・・・世界史においてはクレオパトラ、マリーアントワネット、ガリレオ・ガリレイなど。確かに歴史小説やドラマによって話が史実以上に盛られているかもしれないが、どれも国民の多くが親しんできた言葉だ。むしろ歴史を学ぶ楽しさを教えてくれた人物名だけに、違和感を覚える提案だ。
「卍」を見事にコミュニケーションを図る新語に変化させて生き残らせたのは、若者達の感性だ。
日本の歴史教育は、大人たちの矮小なイデオロギーによって迷走し、次第に貧しくなって行く!
| 17.12.22