trendseye

アラビア書道

艶めかしく流れるようなアラビア文字は、7世紀以降イスラム教の布教のための表現として飛躍的に熟成して来た。コーランを芸術的に美しい文字で書くためのカリグラフィーとしても育まれてきたのだ。
アラビア文字を美しい模様のようにしたためる“アラビア書道”の教室が日本にもある。渋谷のモスク『東京ジャーミィ』で週末開かれているのを知る人は少ないが、熱烈なファンがいるようだ。
ところが逆にアラビア諸国では、アラビア文字は確実に衰退の途を辿っているらしい。グローバル化で英語を喋る人が増え、使用する人々が減少したためらしい。残念なことに非アラブ文化圏において、「恐怖」や「テロリズム」を象徴するものとして認識されてしまったことも原因だ。「ISIS」(イスラム国)はイスラム過激派組織の代名詞となっているが、本来「isis」(イシス)『困っているものに助けを差し伸べる魔法使いの女神』を意味する単語だった。トヨタにも「isis(イーシス)」という名の車があったくらいだ。女神がまさに立ち向かっていた悪そのものを象徴してしまうとは、なんとも皮肉だ。
そうした中、カリグラフィーとしてよく使われるアラビア文字を分解して“レゴブロック”で表現し、まったく新しいイメージをつくる教育アプリ「Let’s Play」(http://ghadawali.com/lets-play)が近々登場することになり注目されている。
「ある国を消滅させる簡単な方法は、その国の言葉を滅ぼしてしまうことだ」と言われるが、言語は単にコミュニケーションの手段ではない。 人々が歩んできた特定の文化や背景を表すものであり人々の感情と繋がっていることを、アプリの発案者は伝えようとしている。
朝鮮半島で李氏朝鮮第4代王の世宗が、朝鮮固有の文字の創製を積極的に推し進めるためには漢字に替わる独自の文字が必要だと考え、ハングル文字が誕生した。北朝鮮は早々と1948年に中国由来の漢字を全廃し、韓国でも1970年には漢字廃止政策が取られ、朝鮮半島は漢字(中国)と言う理解者を失った。北朝鮮の脅威により、今や美しいハングルはアラビア文字と並んでアンチアメリカの記号と化してしまった。
世界における英語の伸張が他の言語の発展を妨げ存在を脅かし、英語圏文化による世界支配の懸念が高まる中、「Let’s Play」の試みはアラビア文字に限らず文字に秘められた文化的背景の理解を促すものとして大いに期待される。

| 17.10.06

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.