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セブン銀行ATM
ネットバンキングが浸透してきた現在も、ATMは銀行と預金者をつなぐ必要不可欠な接点と思われている。今まで各銀行は専用端末を増やすことにまい進してきたが、ここに来て、地銀を中心にじわじわと、セブン銀行(http://www.sevenbank.co.jp/)にATM業務のアウトソースをするという地殻変動が起きている。230万人を超える外国人居住者と、今年は2600万人に迫るともいわれるインバウンド観光客に対して、日本の銀行のATMは無用の長物でしかない。世界中の銀行ATMがセキュリティーを備えてつながっている中で、日本の銀行ATMは未だ“専用”を売りにしているからだ。
銀行間の世界ネットワークに繋がりグローバルATMとして常にセキュリティーを高めていく投資は、メガバンクでさえその負担を躊躇するところだ。それに引き換えセブン銀行のATMは既にグローバル化されているのだから、これを導入した方が手っ取り早くて安い。今や590社以上の金融機関と提携、2016年7月末現在、全国に22,000台以上のATMを展開するガリバーだ。創業165年の歴史を持つ海外送金サービス世界大手の「Western Union」と提携し、8言語に対応して、銀行窓口よりはるかに簡単に海外送金できる。セブン銀行はグローバルATM網に経営資源を集中したため預金残高は6000億円に満たないが、今や多くの人にとって、特に外国人にとっては欠かせない存在なのだ。
実はこうした業界の変化は、ここ数年話題になっている金融テクノロジー「Fintech(フィンテック)」が大きなトリガーになっている。中でも“ブロックチェーン”と呼ばれる取引管理技術は「フィンテック」の本丸と言われ、セブン銀行は「フィンテック」対応の専門部署を立ち上げて、グローバルATMをプラットフォームに様々な国際金融サービスを展開しようとしている。
外国人居住者を相手にしたビジネスを追及することはATMの能力を上げることに大きく寄与している。海外ネットワークとつながらないサービスは利用してもらえないからだ。グローバルATMは侮れない潜在力を秘めており、グローバル化を置き去りにしたメガバンクのATMは、日本人利用者にとっても無用の長物と化す恐れがある。この低金利時代、貸し出しでは利益を上げられず、投資銀行業務も恐くてできず、グローバルATM化も遅れているのでは、日本の銀行に未来はまったく感じられない。
4000万人インバウンドを目標にする日本の「観光立国」を陰で支えているのは、実は「セブン銀行ATM」、というのが現実である。
| 17.09.29
バイアメリカン
北朝鮮が長距離ミサイルを発射する度に、日本の迎撃態勢はどうなっているのか?とテレビのワイドショーが恐怖心だけをあおり立てている。
500km以上の高度で成層圏を飛ぶミサイルをそもそも迎撃できるのか?観測衛星より高い高度で日本上空を飛んだとしても領空侵犯ではないし、国際法違反とも言えない。そもそも日本のPAC3は領空侵犯の戦闘機撃墜用だから、せいぜい高度15kmしか射程がないのにも関わらず、TV局マスコミは言葉巧みにICBMを迎撃できるかのような報道をしている。一体、誰のために何を報道しようとしているのか?
アメリカの武器輸出は公然とした産業だ。当然のことトランプ政権は軍需産業での成功がアメリカ経済の大きなプラスになると考えているし、日本の自衛隊が大のお得意様の一つであることは間違いない。「PAC3」の次は「イージス・ショア」、さらに「THAAD」とどんどん性能も値段もエスカレートする。
一方日本でも今年6月に千葉の幕張メッセで第2回国際兵器見本市「MAST Asia 2017」(https://www.m-messe.co.jp/event/detail/4308)が開催され、武器の商談がにぎにぎしく行われた。安倍政権は3年前2014年4月に『武器輸出三原則』を47年ぶりに全面的に見直し、「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。そして翌年10月には防衛装備庁が設立され、渡辺秀明長官は「日本は地域情勢の変化に積極的に対応し、高品質の防衛装備品と技術を海外に提供することで国際的に"貢献"しなければならない」と述べた。何に貢献するのかよく分からないが、ついに日本の軍需産業が堂々と復活した?ことだけは事実のようだ。
結果として、北朝鮮のミサイルと核開発はトランプ、プーチン、習、安倍にとって追い風だという見方がある。当の金正恩に至っては、4人への"貢献"に対して報酬を意識している節すらあるようでややこしい。
Jアラートが東北で鳴り響いている影で、アメリカが日本との約2兆円の武器商談をまとめたと知れば、トランプの発する「バイアメリカン」を狙う過激なTwitterの意味も分かりやすい。ちなみにブッシュJr.の時はイラクの大量破壊兵器を理由に、オバマの時はイランの核開発を理由に、アメリカの軍需産業が潤ったことを忘れてはならない。
ミサイル核攻撃に何の効果もないPAC3を配備し、これまた何の効果もない防災頭巾を被って健気にも小学校の体育館に伏せる子供達の姿を無為に報道してはならない。Jアラート1回で内閣支持率5%UPということか?少なくともTV局は子供達の訓練が軍需産業への"貢献"に繋がらないよう、パロディの筋書きを国民に正確に伝えるべきであろう。
| 17.09.22
インバウンド爆発
最近旅行業界では「観光」という言葉が禁句になっているそうだ。代わりに好まれている言葉は「地元」なのだとか。地元の人々によるイベントを体験する旅行者が急増している。
Airbnbは昨年11月、これまでのユーザー同士の部屋の貸し借りに加え、新たに「Trip」(https://www.airbnb.jp/new)と呼ばれるローカルな「暮らす体験」を提供し始めた。部屋だけでなく「暮らし方」も提供できるホストへつないで行こうという取り組みだ。
「Trip」での「暮らす体験」とは、地元のエキスパートが企画する手作りのアクティビティだ。「侍の剣術ワークショップ」といった単独のアクティビティもあれば、「マリブでクラシックカーについて学んで実際に運転する」という数日間におよぶものまで様々である。他にも「パリでバイオリンを製作する体験」や、「ケニヤでマラソンに参加する体験」などのコンテンツもあるそうだ。このサービスの提供に伴い、世界12都市(ロサンゼルス、サンフランシスコ、マイアミ、デトロイト、ハバナ、ロンドン、パリ、フィレンツェ、ナイロビ、ケープタウン、東京、ソウル)を含む世界39都市のホストは、自身の「体験」の掲載をAirbnbにリクエストできるらしい。
世界中で制作・厳選されたプレミアムでエッジーなコンテンツを、毎日5千万人以上に提供しているデジタルメディア「VICE」とのコラボレーションも注目だ。日本からは、世界で最もゲイバー密度が高い新宿2丁目をめぐるツアーや、国際的人気を博す日本のBL漫画家から直接プレゼンテーションを受ける体験、東京のLGBTQ(Lesbian, Gay ,Bisexual, Transgender and Queer and/or Questioning)シーンを内側から見る体験などが並ぶ。地元のアンダーグラウンドなカルチャーにどっぷり浸かるユニークな旅の提案は、旅行の概念を根底から揺さぶるものだ。
地元との交流体験マッチングサイト「TABICA(タビカ)」は、日本の過疎地域869市区町村が2040年までに消滅の危機に直面するといわれる中、そうした地域の暮らしを誰もが体験できるようにすることで旅による地方活性化を目指している。
片や中国から大量のインバウンド団体旅行者が押し寄せるが、ネット上で繁殖し始めているインバウンドFIT旅行者は多様な体験に向かっている。インバウンド観光は量と質両睨みで数年以内に4000万人時代に突入するだろう。出て行く日本人は比較的均質だが、入ってくる外人は超多様だ。
観光庁の予想をはるかに超える多様性を持ったインバウンド爆発時代が、もうそこまで来ている。どうする日本!
| 17.09.15
拡張現実(AR)
現在神戸で開催中の「怖い絵」展は8月20日までに11万4千人が来場、ドイツ文学者で作家の中野京子氏が“恐怖”という切り口で西洋美術史上の名画を読み解いた著書がもとになっている。東京では上野の森美術館で10月7日(土)から開催予定だが、難しい展覧会にも関わらず前売り券の売れ行きも好調で盛況が予想される。
その裏には「音声ガイド」の進化があるようだ。作品には日本人になじみの薄いギリシャ神話やキリスト教、歴史など欧州文化のエッセンスが下敷きとなった絵画が多く、視覚的な怖さだけでなく、“この絵はなぜ怖いのか?”と隠された背景を知ることで“恐怖”を紐解いていく新しい視点の展覧会になっている。そのため約350 台用意した音声ガイドがすぐにすべて貸し出し中となり、返却されるのを待つ来場者まで現れるという異例の事態が起きているという。
通常、入場者の10%が借りればヒットとされる音声ガイドの利用率が、「怖い絵」展では25%を上回り、急遽700台に倍増して対応。映画のように絵画の中にも『ストーリー』があり、それを『読み解く』楽しさが美術展の新たな魅力になってきているようだ。
ところでGoogleは、世界中の美術館や博物館と協力することで従来の音声ガイドを一歩前進させ、来館者が「Tango」(https://get.google.com/tango/)対応スマートフォンを利用して歴史上の芸術作品を拡張現実「AR」(Augmented Reality)で体験できるようにした。まずはデトロイト美術館で始められたこの試み、来館者は芸術作品をスマートフォンの画面を通して見ることで、さらなる背景情報に触れることができる。
たとえば棺の中にある2000年前のミイラの骸骨をX線写真で見たり、色あせた石灰石の彫刻を数千年前にはそうであったと想像される一段と豊かな色彩にしたり、6階建てほどの高さがあるバビロニアのイシュタル門を、デトロイト美術館が所蔵する蛇のような聖獣のパネルからデジタル復元したりできるのだ。
マイクロソフトのビル・ゲーツは自身の財団で、世界のすべての現存絵画をデジタル画像でアーカイブ化するという壮大な企画に取り組んでいる。これに成功すれば、いかなるところにある名画もスマートフォンをかざすだけで、そのヒストリーとプロファイルが解説される「AR」時代に突入し、人類の記憶がまさにスマートフォンでバックアップされる時代に入っていく。
「AI」(人工知能)、「AR」(拡張現実)、「AD」(自動運転)という「3A」がこれからの人類の新三種の神器なっていくのか?
| 17.09.08
ギャンブル大国
日本中央競馬会(JRA)の女性職員が立ち上げた「UMAJO」プロジェクトが府中競馬場に誕生させた女性のためのリラックススペース“UMAJO SPOT” (http://umajo.jra.jp/event/201504tokyo/)が、全国の競馬場へも続々と波及し話題だそうだ。
このSPOT、テレビやマークシートに加え、コーヒーや紅茶などのドリンク類が無料で提供されオリジナルスイーツも置いてあるという、これまでの競馬場の殺伐としたイメージからは想像できない女性でも和める空間となっている。しかも驚くべきことに子供の同伴も可能なのだ。子供が遊べる遊具を充実するところも増え、その結果、国が音頭をとって家族連れでギャンブルを楽しむ場所を増やすという世界的に奇異な現象が起きている。
2016年のJRAの勝馬投票券収入は2兆6913億円、純利益は586億円と5年連続の黒字決算となったようだが、馬券収入は最盛期1997年の4兆円と比べ約7割といった水準にとどまった。一方、モバイルゲームの収益は、前年同時期比53%成長の119億ドル(約1.3兆円)を記録しているそうだ。Googleが前年比83%、Appleは35%の成長だ。中でも人気ソフトFate/Grand Orderは、日本のみのリリースでスマホアプリの世界収益第2位を記録している。従って全119億ドルの収益中、日本のプレイヤーから得た収益の比率はかなり高そうだ。日本人が公営ギャンブルやパチンコを卒業して次第にモバイルゲームにハマって行く傾向が、そこから見えて来る。
警視庁トップは、パチンコは直接換金できないからギャンブルではない、と言ってパチンコを裏街道に追い込んで来た。換金出来ないと信じる現場の警察官はいないだろうに…。今後スマホゲームも仮想通貨やビットコインと結びつかない保証がどこにあるのだろうか。
サンズのCEOに言われなくとも、「世界最大のギャンブル国家」であることを内閣府と警察庁が認めることが依存症対策の出発点ではないだろうか。しかも、日本は既に競輪、競馬、競艇の「TV広告」を許可し、官主導で“UMAJO SPOT”などを新設し女性競馬人口を増やすことに必死になっている国でもあるのだ。
片や一般女性の子連れギャンブルを促進しておきながら、ギャンブルではないとしたパチンコの依存症対策強化をうたう矛盾。こんな欺瞞が長続きするはずがない。
どうせ法案を通すのならば、堂々とIRリゾート施設を作り、スマートなエンターテイメントの場を提供するべきだろう。パチンコのように何か後ろめたい裏街道に追いやってはいけない。
| 17.09.01