タカタ
エアバッグのリコール問題で業績が悪化し経営破綻にまで追い込まれたタカタだが、これは訴訟王国米国における最初の対応を誤って悲劇的な結末を招いた典型的な事例である。先頃、日米同時に経営再建に向け法的整理に踏み切ったが、米国市場からの悪評のみならず、タカタ製品を信じて使い続けて来たホンダを始めとする自動車メーカーからも三下り半を突きつけられた恰好だ。タカタ問題とは一体何だったのだろうか?
タカタ問題が発覚した同じ2008年当時、アクセルの急発進問題で過去最大のリコール問題を起こしたトヨタは、豊田章男社長が米国議会の証人喚問で丁寧に対応し、結果膨大な罰金を払いながらも技術的落ち度は認めず、早々に事態を収拾してリコール訴訟解決のお手本とまで言われた。その後のトヨタの米国市場での快進撃は皆が認めるところである。
似た様な事例で、米国自動車市場でのVWによる排ガス規制ごまかし事件があったが、素早く内部の情報管理問題を認め、3兆円近い罰金を速やかに払って事態を収拾した。その結果技術的欠陥とはみなされず、ブランドイメージの低下は最小限に止まり、昨年再び販売台数でトヨタを抜いて世界一の座を奪い返したのは記憶に新しい。
1988年ジョージ・ルーカスが制作総指揮し、フランシス・フォード・コッポラが監督したアメリカ映画『タッカー』(Tucker: The Man and His Dream https://www.youtube.com/watch?v=ty93RYkzYQQ)が思い出される。戦後、タッカーはアメリカ自動車業界の旧態依然とした体制に真っ向から立ち向かって、自動車王国デトロイトで来るべき時代にふさわしい先進的「タッカー車」を設計。しかしその革新性に恐れをなしたビッグスリーの横槍・妨害により、「タッカー車」は51台しか生産されることはなかった。「こうした理不尽を許せば、アメリカはやがてどん底に落ち、敗戦国からラジオや車を買うことになる」と彼は予言する。
それから半世紀がたち、タッカーを潰したGMは奇しくもその予言通り、敗戦国である日本車とドイツ車に敗れて破綻企業となるのである。安全装置の製造者責任を完成車メーカーに押し付けたタカタの事例も、巨大自動車メーカーの陰に隠れ労せずして望外の成功を貪って来たつけが回った結果で、自業自得だと言われている。
タカタ問題は、アメリカ、いや世界で成功するためには、世界に通用する技術力は勿論のこと、並み居る横槍・妨害に素早く対応する、強靭かつフェアーな精神が必要なことを反面教師として示した好例である。
| 17.07.14