trendseye

摩拜単車

中国でシェアサイクルサービスを提供する「摩拜単車Mobike」が、いよいよ日本に上陸する。
モバイク・ジャパン(福岡市中央区 https://mobike.com/jp/)として、7月の福岡市との提携に続き10月からは札幌市でも技術やサービスの社会的な実証実験を行うという。
時間単位で借りることができ移動先の「サイクルポート」に返却できる自転車シェアリングは、世界の大都市で活用されている。中でも近年の中国での勢いは凄まじく、既に100都市以上で数百万台が稼働している。黄色が中国自転車シェアリングの元祖「ofo(小黄車)」、オレンジ色が「摩拝単車 Mobike」だ。シェアリングサービスはここ1年で急速に広まり、フィナンシャル・タイムズが3月に掲載した世界の都市における規模比較によれば、上海が45万台で世界最大、次いで北京、深圳、広州が10万台以上で同率2位、ロンドンが5位(1.4万台)、ニューヨークが6位(1万台)と続く。中国以外はファッションの域を出ない。
中国の自転車シェアリングには、貸し借りの為の「サイクルポート」がない。自転車にはGPSが内蔵され、スマートフォンのアプリで自転車の認識番号やカギとなる暗証番号をやり取りするだけで、自転車をどこでピックアップしても、どこで降りてもいいようだ。文字通り「乗り捨て」自由、最初からスマートフォンありきでシェアリングが始まっているところが評価できる。
ofoには電子商取引(EC)中国最大手の阿里巴巴集団(アリババ)が出資し、MobikeにはWeChatのTencent騰訊が出資している。それぞれ「Alipay」と「WeChat Pay」という強力なキャッシュレス決済ツールを保有し、中国のキャッシュレス社会とスマホの連動による各種サービスの発展のスピードには目を見張るものがある。タクシー業界でもすでに完全に中国版Uber「滴滴出行」が他にとって替わり、流しを捕まえるのは困難な状況になりつつある。日本のタクシーの決済サービスは、大半が未だ現金でクレジットカードにはサインが必要で、スマホ決済はもとよりデビットカードの普及も大きく遅れている。そこにはスマホとIoTが創り出すキャッシュレス社会に対応できていない日本の姿がある。
日本はUberに反対し、Airbnbによる民泊にも消極的。オリンピックを前に世界をリードするスマホサービスが生まれてこないのはどうしたことなのだろうか?タクシーのクレジットカード決済で、ダラダラ何枚もレシートを出している場合ではない。

| 17.07.28

コード・カッティング

船越英一郎・松居一代夫妻に関する話題が、ここ3週間狂気に近い。
松居一代が6月末YouTubeで夫・船越英一郎を非難し始め、3週間で11本の動画をアップしたが、1本当り平均視聴回数が100万回を超えているそうだ。100万回の再生で約3万6000円の収入になると言わる業界で、この調子で毎日このくだらない動画を配信し続けると、年間300本が100万回ずつ視聴されることで収入は1000万円を超えるらしい。事前にTwitterで煽って動画の再生回数を稼ぐなど、すっかり人気YouTuberが板についてきた松居一代の収入につながっている。
そうした中、テレビは単なる視聴率の数字を稼ぐ為に40時間近く同テーマを放送し続けている。どのチャンネルも船越夫妻か渡辺謙しか出てこない。渡辺謙はさておき、テレビがYouTube画面を繰り返し露出したことで、松居一代の動画は短期間に数千万人が知るところとなり、YouTubeの再生回数を更に押し上げることになった。しかし皮肉なことに、こうした個人の異常な状況を、視聴率だけを目安に配慮なく晒すテレビ番組の姿勢に、視聴者が着実に離反していっていることにテレビ局は気が付いていない。既に民放各社は、YouTubeの奴隷と化している。
YouTubeは2005年にサービスを開始し、2006年には単なる動画配信機能としてGoogleに買収されたが、今やGoogleの主力事業の一つに育ち、ケーブルテレビを解約する「コード・カッティング」という言葉を生み出したほどである。
更に先日追い討ちをかけるように、Googleは全米でテレビ放送をストリーミングする定額サービス「YouTube TV」(https://tv.youtube.com/welcome/)を発表した。スマートフォンからPCにまで対応し、米国の大手テレビネットワーク、主要な専門チャンネル47局をケーブルテレビの半額で視聴可能にしている。
テレビ放送までも手中に納めつつあるGoogleは、テレビコンテンツの個人的な嗜好まで把握し、本人以上にユーザーの嗜好について詳しく知っているということになって行くだろう。
テレビの環境が米国と大きく異なる日本でも、AbemaTV、LINE Liveなどが台頭し大きな変化が生まれ始めている。TV局が視聴率という数字に囚われている間に、新興のストリーミングプレイヤーにどんどんユーザーが流れているのだ。
リアルタイムの報道だけは最後まで残るのだろうが、ドキュメンタリーやドラマ、スポーツはストリーミングサービスを利用した方が適切だ。さらにバラエティや音楽はYouTubeの方が優れているということだろう。
日本の民放TV局は明らかにYouTubeによって淘汰されていく。YouTubeでネタ探しをしているわけだから。

| 17.07.21

タカタ

エアバッグのリコール問題で業績が悪化し経営破綻にまで追い込まれたタカタだが、これは訴訟王国米国における最初の対応を誤って悲劇的な結末を招いた典型的な事例である。先頃、日米同時に経営再建に向け法的整理に踏み切ったが、米国市場からの悪評のみならず、タカタ製品を信じて使い続けて来たホンダを始めとする自動車メーカーからも三下り半を突きつけられた恰好だ。タカタ問題とは一体何だったのだろうか?
タカタ問題が発覚した同じ2008年当時、アクセルの急発進問題で過去最大のリコール問題を起こしたトヨタは、豊田章男社長が米国議会の証人喚問で丁寧に対応し、結果膨大な罰金を払いながらも技術的落ち度は認めず、早々に事態を収拾してリコール訴訟解決のお手本とまで言われた。その後のトヨタの米国市場での快進撃は皆が認めるところである。
似た様な事例で、米国自動車市場でのVWによる排ガス規制ごまかし事件があったが、素早く内部の情報管理問題を認め、3兆円近い罰金を速やかに払って事態を収拾した。その結果技術的欠陥とはみなされず、ブランドイメージの低下は最小限に止まり、昨年再び販売台数でトヨタを抜いて世界一の座を奪い返したのは記憶に新しい。
1988年ジョージ・ルーカスが制作総指揮し、フランシス・フォード・コッポラが監督したアメリカ映画『タッカー』(Tucker: The Man and His Dream https://www.youtube.com/watch?v=ty93RYkzYQQ)が思い出される。戦後、タッカーはアメリカ自動車業界の旧態依然とした体制に真っ向から立ち向かって、自動車王国デトロイトで来るべき時代にふさわしい先進的「タッカー車」を設計。しかしその革新性に恐れをなしたビッグスリーの横槍・妨害により、「タッカー車」は51台しか生産されることはなかった。「こうした理不尽を許せば、アメリカはやがてどん底に落ち、敗戦国からラジオや車を買うことになる」と彼は予言する。
それから半世紀がたち、タッカーを潰したGMは奇しくもその予言通り、敗戦国である日本車とドイツ車に敗れて破綻企業となるのである。安全装置の製造者責任を完成車メーカーに押し付けたタカタの事例も、巨大自動車メーカーの陰に隠れ労せずして望外の成功を貪って来たつけが回った結果で、自業自得だと言われている。
タカタ問題は、アメリカ、いや世界で成功するためには、世界に通用する技術力は勿論のこと、並み居る横槍・妨害に素早く対応する、強靭かつフェアーな精神が必要なことを反面教師として示した好例である。

| 17.07.14

将棋ソフト

30年ぶりの新記録である公式戦29連勝を成し遂げて注目を集めた14歳のプロ棋士、藤井聡太四段の快進撃は、惜しくも30連勝には届かなかった。しかし、彼が人工知能(AI)を用いた将棋ソフトを使って技の研究を行ってきたことが話題になり、将棋界に“革新”を起こすと同時にAIをごく身近に感じさせた出来事でもあった。
一方、将棋ソフト「Ponanza」を開発した山本一成がNHKの番組「視点・論点」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/273618.html)で、「人工知能の分野では、だんだんと黒魔術の影響力が強くなってきています」と語ったことが注目を集めている。「Ponanza」に限らず、人工知能ソフトは年間何百万回もの対戦を行ってそのデータを蓄積することができ、人間ではとても追いつかない膨大な経験を積んでいる。
科学はもともと「物事を分解し細部の構造を理解していけば全体を理解できる」という「還元主義」の考え方に基づいているが、人工知能は「還元主義とは相容れない」と指摘されている。人工知能研究の分野では、「どうやって生まれたのか、あるいはなぜ効果が出るのかわからない技術の総称」として、「黒魔術」という言葉が定着しはじめている。未来を示す“AI”に、中世の「黒魔術」という言葉が充てられるとはなんとも意外だ。
総務省が発表した「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究(2016年)」によると、日本人が人工知能に抱くイメージは、日本では「コンピュータが人間のように見たり、聞いたり、話したりする技術」というものが最も多い。これに対し、米国では「人間の脳の認知、判断などの機能を、人間の脳の仕組みとは異なる仕組みで実現する技術」という考えが最も多い。
日本では人工知能搭載をうたう家電が溢れているが、これは昔あったマイコン炊飯器の概念の域を出ていない。AIを人間の能力に近づけるものと設定している限り未来はないだろう。それに対し、世界の最先端AI開発の現場では「人間を超えていく」と設定している。この違いに早く気付く必要がある。
今後、社会も人間も人工知能に頼らざるを得なくなる。政治ですらAIに任せた方が合理的に進むと言われている。理屈もわからないままにAIを受け入れるのではなく、あくまでも初期条件の入力は「人間のWantsとNeedsによって設定されている」ということを忘れてはいけない。
日本企業は勇気を持ってAI開発の目標設定を「人間を超えていく」としないと、役員会で黒魔術を語ってもシャレにならないだろう!

| 17.07.07

CATEGORY

  • BOOM
  • FOOD&RESTAURANT
  • LIVING&INTERIOR
  • SCIENCE&TECH
  • TRAVEL
  • TREND SPACE
ART BOX CORP.